投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、マーケットレポート・ヘッドライン。日々のマーケット情報を専門家が分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

調査官は重加算税をかけたがる
税務調査を録音することはできるか?
5/19(日)>>>WEBセミナー

 

「市場予想」の据え置きに反して、トルコ中銀は利上げを決定しました。高インフレ率と通貨リラ安の抑制が利上げの背景と見られます。声明に述べられているようにトルコ中銀は8月から利上げ以外の方法で金融引き締めてきました。今回の利上げは、本来あるべき姿に戻した点でリラにプラス材料ですが、トルコが直面する課題の解消には程遠いと思われます。

トルコ中銀:市場予想に反し利上げを決定、ただし利上げ幅は過去に比べ小幅

トルコ中央銀行は2020年9月24日の金融政策決定会合で、市場予想に反して政策金利(1週間物レポ金利)を従来の8.25%から10.25%へ2%引き上げました(図表1参照)。発表後にリラは上昇しました。

 

トルコ中銀の利上げは18年9月に政策金利を24.0%に引き上げて以来2年ぶりです。なお18年は年初の8.0%から3回で合計16.0%の利上げで、政策金利を24.0%としました。

 

日次、期間:2017年9月25日~2020年9月25日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]トルコの政策金利とリラ(対ドル)レートIの推移 日次、期間:2017年9月25日~2020年9月25日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:市場予想、流動性供給、対外債務、外貨準備

「市場予想」の据え置きに反して、トルコ中銀は利上げを決定しました。高インフレ率と通貨リラ安の抑制が利上げの背景と見られます。声明に述べられているようにトルコ中銀は8月から利上げ以外の方法で金融引き締めてきました。今回の利上げは、本来あるべき姿に戻した点でリラにプラス材料ですが、トルコが直面する課題の解消には程遠いと思われます。

 

通常、市場が金融政策を予想する場合、インフレ率や失業率などからあるべき政策金利を予想します。トルコの金融政策の「あるべき市場予想」は実質金利がマイナスなことから利上げでしょう。しかし利下げを支持する政治圧力を計算に入れて「市場予想」は据え置きとなっていました。

 

当然、トルコ中銀も利上げの必要性を熟知していたため、8月から市場への資金供給に政策金利より高い後期流動性貸出金利などを適用して実質的な利上を行いました。一方で、(恐らく)政治への配慮から政策金利は据え置いていましたが、状況が悪化する中で、本来の姿に戻した点はプラスと見ています。ただ、トルコリラを取り巻く問題は深刻です。

 

まず、対外ポジションがぜい弱です。例えば対外債務対GDP(国内総生産)比率は国際通貨基金(IMF)によると19年で約61%です。これほど高い国は南アフリカなど数えるほどです。また、トルコの債務は公的よりも民間に偏っていることが特色です。対外債務(主にドル)負担の大きい民間はリラ安が続いたことで、リラ換算の債務の増加に直面していることからリラ売り(ドル買い)を余儀なくされる悪循環となっています。

 

対外ポジションの弱さは外貨準備高の急減にも現れています。リラ安を受けトルコ中銀はリラ買い・ドル売りの為替介入を迫られたため、対外ショックを吸収する役割を負う外貨準備高は今年になりほぼ半減しています(図表2参照)。

 

月次、期間:2015年8月~2020年8月、インフレ率はCPI,前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]トルコのインフレ率と(グロス)外貨準備高の推移 月次、期間:2015年8月~2020年8月、インフレ率はCPI,前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

リラ安が進行した背景は、消費者物価指数(CPI)の水準(9月は前年比11.77%)に比べ政策金利が低すぎたことも一因です。その意味で利上げは正しい方向ながら、利上げ幅が十分とは言い難いうえ、利上げの景気への影響も心配です。

 

トルコの国内経済に目を向けると、新型コロナの感染は拡大が早かった分、足元の感染は落ち着いているのはプラス材料です。ただしトルコを訪れる外国人観光客に全く回復が見られないなど景気への深刻な影響は残り回復は鈍そうです。

 

リラを取り巻く環境を考えれば、一段の利上げと、その水準を維持する難しい政策運営が求められそうです。そうなると気になるのは政治の介入で、今後も注視が必要です。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トルコ中銀、「市場予想」に反して利上げ』を参照)。

 

(2020年9月25日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録