「アパマンの法人化」が相続税の節税策になる理由
所有している不動産にアパートやマンションを建てて不動産事業を行い、納税資金を貯めつつ株式会社として法人化することで、相続人に相続財産を分散することができ、結果的に節税が可能になります。
言うまでもなく、株式会社とは「株主が資金を出資する会社」のことです。経営者は株主が主宰する株主総会で選出され、承認されます。そうして委任を受けた経営者(役員)が経営します。相続人である配偶者や子どもに相続財産を贈与し、新たに株主を配偶者や子どもになってもらうことで、相続財産の分散を図ります。
被相続人は、株主以外であれば誰でもかまいませんが、被相続人を役員にして、役員報酬を支払うことになれば、相続財産を分配したことにはならないので注意しましょう。
また、相続人を株主にすると同時に役員にすることで、会社の収益を役員に分散することができ、さらなる節税効果が見込めます。従業員と異なり、役員ならば経営に関与することにより役員報酬は1か月に1回、1時間の仕事でも会社に貢献しているとみなされます。ところが、従業員だと、それでは1時間分の給料しか支払うことができません。これでは会社の収益を効率的に分散することが難しくなります。
なお、役員報酬は毎月同額を支払うことが重要です。毎月の金額が異なると、同額でない部分については賞与としてみなされ、経費にすることができません。経費にできないと、相続財産をスムーズに相続人に移転されることもできなくなってしまいます。役員の給料は基本的に経費に計上できるのですが、事前に届け出ている賞与以外の賞与は計上できないことを覚えておきましょう。
従業員の場合は、給与も賞与も全額経費にすることができますが、前述のように支払うためには、労働の対価としての条件が必要になるので注意が必要です。
役員は多いほどおトクだが…「多すぎ」には要注意
このように、法人化して役員報酬で相続人に相続財産を分配する方法は、相続税の節税方法として非常に優れているところがあります。考え方としては、役員が多ければ多いほど、会社の収益を役員に分散することができるので、役員は多いほうがいいのです。
しかし、だからと言って役員を増やしすぎるのは考えものです。法律上は、役員の数に制限はありませんから、法的には問題ないのですが、会社の規模や内容からいって、何十人もいるというのは不自然だと言われることもあります。ですから、常識の範囲内で役員の数を設定することが大切です。また、孫を役員にしようと考えている場合、学生や未成年者に対する役員報酬は認められないので、こちらも注意が必要です。