「お金がなくとも幸せ」はありえない
ハッキリ、断言します。
お金は、生きていくうえでかなり大事。だってお金がなくても幸せなんて、冷静に考えたらやっぱりありえないし、難しいことですよ。私はいかにお金が大切かを、小さいときから身にしみて感じながら育ってきたんです。
祖父のところには、さまざまな人が事業に失敗したりしてお金を借りにきていました。「お金、また借りにくるらしいよ」「この前、ウン百万貸したばっかりだよね。その分も返してないのにどうするんだろう」「またヘンな商売を始めるらしい。いい加減にしたらいいのに」そんな会話を、包み隠さず話す祖父母。
そこに大人3~4人がお金を借りにきて、「これで最後にしますから……!」と土下座しているのを見て、「やっぱりお金の問題って大変なんだな。はー、でもやだなあ、こういう姿!」と、幼いながらに思いました。一部の親戚たちも、祖父に頼っていたんです。
そんななか、夫婦仲がよくなくて、ダンナと別居していた叔母の姿は、私のいい手本になってくれました。彼女は別居してからも薬剤師として働き、女手ひとつで子ども3人を育てていたんです。
女性が「手に職をもつ」ことがいかに大事か。それを知るきっかけになりました。
女性が自立してお金を稼ぐには……医者だ!
祖父母が死んだあと、私はどうなるんだろう。
路頭に迷うんじゃないか。
でも、両親にだけは絶対頼りたくない。
世の中、そんなに甘くないから、これは真剣に人生について考えないといけないんじゃないか?
そう思ったんです。医者になるまでは大変だけれど、そこに到達すれば20代の早い段階から地位も確立されるし、それなりにお金も稼げるわけだから、生きていくのはラクだろう。やっぱり医者になるのがいちばんだ、って。
裕福な祖父の姿を見ていたからよけいに、医者というのは仕事こそ大変だけれど、将来なんとか生きていける仕事だろうと思っていたし、いつ私が土下座する身になるかと考えると、本当におそろしかったんです。
でも、それがよかったと今になって思います。自分で仕事をして生きるということは、自立へのパスポート。誰かに寄生して暮らす必要もないわけですよね。
たとえば青年実業家や医者といったパートナーをつかまえて結婚するんだ、という女性もいるけれど、それってものすごく不確定で、本当に実現できるのかどうかもわからないそんなことに頼って自分の人生を歩んでいいの? と思ってしまうんですよ。
それに祖父母は私に対しては、わりとお金に甘くて、好きなように遣わせてくれていたんですね。たとえば東京に行きたいというと、新幹線のチケットを買ってくれて、ひとりで乗って遊びに行って。だから自分の欲望を満たすには、お金がかかることも自覚していました。
それもすべて、祖父母の家で大人のイヤな部分やお金の厳しさ、生きていくつらさ、現実の大変さを目の当たりにする機会があったからです。
今の子どもたちはそういう現実を曖昧にされて、キレイなところだけ見せられているのかなとも感じます。
でも、現実は現実として受け止めて、そのうえでじゃあどうするか?と考える力を養うこと。それこそが大切なんじゃないかと思うんです。