現代の医療は効率化ばかりに目を奪われている
またサービス業の特徴でもある「異質性」の解消にも役に立つと考えます。パスの導入が患者ケアの質を改善し、かつ医療費を削減できるというアウトカムが得られるとしたら有益だと考えます。しかし、そもそも現代の医療は日々のオペレーションの効率化ばかり
に目を奪われていることが問題です。
オペレーションの効率化は戦略とは異なるものであり、クリティカルパスの運用を病院の経営戦略と考えているとしたらそれは全くの誤りですし、クリティカルパスは医療のコモディティ化に拍車をかけているだけかもしれません。クリティカルパスの活用が本当に医療費を減少させているのか、患者のQOLを向上させているのか、医療者の業務負担が軽減できているかなどといったアウトカム評価が必要な時期に来ていると考えます。
クリティカルパスは医師のみでなく、看護師、薬剤師、栄養士、検査技師など、多職種で作成するため、その作成過程で色々な部署が業務に関して意見を交わすというプロセスそのものは病院マネジメント上ではプラスの効果をもたらすメリットはあります。多くの職種間のコミュニケーションの場となりますし、日常の現場の課題をパス作成時に議論するきっかけになることもあります。
クリティカルパスによるルーチン作業は、作業に疑問を持たせずに流してしまい、創造的な思考を停止させてしまうリスクについて頭の片隅に置いておく必要があります。
※1…沼上幹著 「組織戦略の考え方|企業経営の健全性のために」筑摩書房(2003年)
※2…P・F. ドラッカー著、上田惇生訳『プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか はじめて読むドラッカー(自己実現編)』、ダイヤモンド社(2000年)
※本記事は連載『MBA的医療経営』を再構成したものです。
角田圭雄
愛知医科大学/内科学講座肝胆膵内科学准教授
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