ご両親など、身近な親族が亡くなった場合は相続税の申告が必要なことがありますが、その際、「税理士に頼まなくても、自分で申告できるんじゃないか」と考える人もいることでしょう。しかし、もし自分で申告を行った場合、様々なリスクを抱えてしまい、結果として損をする可能性が高くなってしまいます。今回は「相続税申告」の手続きについて解説します。※本連載は、新宿税理士事務所の税理士である坂根崇真氏が、相続税対策の基礎知識について解説します。※本記事は 「新宿相続センター」掲載の記事を転載・再編集したものです。

相続税の「特例」が使えないか検討する

相続税の計算では、税金の支払いを減らす様々な特例があります。たとえば、

 

・配偶者の税額の軽減

・小規模宅地等の特例

 

などがあります。これらは簡単にいえば、

 

・亡くなった方の奥さん、旦那さんが財産を引き継いだとき

・自宅や賃貸用不動産を引き継いだ時

 

こういったときに活用できる可能性がある制度です。これらをうまく活用することができれば、相続税が何百万円、何千万円単位で変わることもあります。ただし、これらの表面的な情報は出回っていますが、実際に検討する際は「契約書」や「租税特別措置法」などの法律を確認し、本当に適用できるか検討する必要があります。

 

なぜなら、どこかの書籍に記載されていた通りに対応したとして、情報が古かったり前提が異なっていたり、そもそも法律に則っていなければ使えないからです。

 

また、仮にこれらの特例を使うことができたとしても、誰が、どの財産を、いくらもらうかという相続税以外の大事なポイントもあります。

 

このように、相続税の支払いや、家族仲などの感情面も考慮して、誰がどの財産をもらうのか、特例を使うべきか等を検討しなければいけないのが難しいところです。

相続税申告手続きを税理士に依頼すべき理由

◆手続きがそもそもできない
上記で解説した通り、相続税の手続きには多くの書類の収集に加え、以下のこと等を行わなければなりません。

・契約関係の確認
・登記簿に基づく権利関係の確認
・市役所や各種機関への確認
・実地調査

これら以外にも相続財産によっては、行う手続きは数多くあります。税理士でさえ、相続に関して精通している人でなければむずかしい作業です。


◆ミスしたら罰金がかかる
相続税の申告は、ミスをしたら罰金がかかります。 相続財産は、現金や預金、不動産以外にも、家庭用財産や故人にかけられていた死亡保険金など、様々な種類のものがあります。

これらの相続財産を全て漏れなく把握することは、一般の方には困難です。その為、税理士に依頼せずに自分で相続税の申告を行ってしまうと、相続財産の計上漏れとなり、結果として多額の罰金が発生する可能性があります。


◆一世代だけでなく、二世代の税負担を考えた方が良い
相続税の申告では今回の相続だけでなく「次の世代の相続に備える」ということも大事なポイントです。相続では配偶者や子、孫へと財産が代々引き継がれていきます。中途半端な知識で、将来発生する相続を想定せずに今回の相続だけを考え申告してしまうと、結果として損をする可能性があります。

専門家である税理士に依頼することで、相続財産の計算や各特例の適用判定、相続財産に漏れがないか、などのリスクを回避することができます。 また、相続税の申告にあたって、税理士がどのような確認を行ったか内容を記述する「書面添付制度」を活用することによって、税務調査が行われる可能性を低くすることができます。


◆税務調査のリスクが減る
もし税務調査が行われた場合、調査官から様々なことを質問されます。故人が生前にどのような活動をしていたか、贈与が行われていたかなど、 書類確認だけでなくヒアリングも行われ、申告書の内容が正しいか、財産の漏れが無いか確認が行われます。

専門用語などを用いられると素人では理解できず、調査官にうまく説明することができません。また、いくら言い訳をいったところで、それが相続税の法律に則っていなければ何の反論もできません。

税理士に依頼している場合には、申告内容を税理士が把握しているため、調査官への対応もしっかり行ってくれるでしょう。その為、不安な税務調査でも安心して臨むことができます。

※もちろん、申告の際に税理士に包み隠さず話していることが大前提です。


◆相続全般に関するアドバイスをもらえる
相続では税金計算だけではなく、登記関係や書類の作成など様々な手続きが必要です。

税理士に依頼している場合には、それぞれの対処法や助言、また、司法書士や弁護士など、それぞれの分野に適した専門家を紹介してくれる為、安心して相続手続きを進めることができます。


◆遺産相続争いを回避しやすくなる
遺言書が無い場合、親族間の遺産分けは、話し会い(遺産分割協議)によって行います。

遺産分割協議では、お金や不動産といった財産が直接的に絡むため、親族間で揉めるケースが非常に多いです。

相続税が低くなる遺産の分け方の提示は税理士にしかできませんが、万が一揉めそうな場合には、信頼できる弁護士などを紹介してくれる為、円滑に手続きを進めることができるでしょう。


上記で説明した手続きは、ほんの一部です。相続が起こったときは、申告だけでなく、不動産の登記など色々な手続きが必要です。

 

相続は人生に何度か経験するだけですので、誰でも手続きについては不慣れで時間もかかります。相続税の申告においては期限がありますので、相続が起きて何をすれば良いかわからないときは、すぐに専門家に相談することをお勧めします。
 

 

坂根 崇真
新宿税理士事務所 代表税理士

 

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