15年後「3人に1人」が高齢者になる
2019年、いわゆる「老後資金2,000万円問題」で世間が騒然となりました。「夫65歳以上、妻60歳以上で無職の夫婦世帯が安心して老後を生きるためには、年金とは別に、約2,000万円の資金が必要になる」という、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループがまとめた報告書が発端でした。
さらに「2,000万円の資金では、余裕ある余生は過ごせない」と、「実際に必要な老後資金は5,000万円だ」「いや8,000万円は必要だ」など、さまざまな主張が繰り広げられました。しかし、この議論は未来に対する警告が主で、現在の高齢者の生活ぶりはどうなのか、という声はあまり聞こえてきませんでした。
よく耳にするのは、いわゆる「下級老人」の暮らしぶり。困窮を極める老後がセンセーショナルに提示され、現役世代は不安になるばかり。一方で「元気な高齢者」も伝え聞くことが多く、実際のところはどうなのか、気になるところです。
そこで現在の高齢者の暮らしぶりの実際をのぞいてみましょう。まずは前提として高齢化の実態をみていきます。
日本の総人口は1億2,617万人(2019年10月1日時点)。そのうち65歳以上の高齢者の割合は25.0%で、過去最高を記録しています(図表1)。さらに年代別にみていくと、70歳以上は総人口の18.2%、75歳以上は12.3%、80歳以上は7.3%となっています。
日本の人口は減少トレンドに突入し、2029年には1億2,000万人、2053年には1億人を割り込み、2065年には8,808万人になると予測されています。一方で高齢者人口の総人口に占める割合は、昭和60年に10%を超え、20年後の平成17年には20%を超え、その8年後の25年に25.0%となり、初めて4人に1人が高齢者となりました。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇を続け、2035年には3人に1人が高齢者になるといわれています。