「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

音がしない仕掛けの工夫…立ちはだかる「長いしっぽ」

■シーソー板を内蔵した1匹取りの仕掛け​

 

沢山いるネズミを捕獲具だけで何とかしたいのなら、仕掛けがロックする時に音がしない工夫を考え出すことから始めなければならなかった。音がほとんどしない、少ない力で入口をロックする方法はいくつか浮かんだが、長いしっぽが邪魔になるので入口が完全に閉じるようにする工夫は難しかった。

 

そこで私が思いついたのは、ネズミがシーソー板を乗り越えて奥の餌を食べようとした時に、シーソー板が奥に傾斜して狭い入口を塞ぐ物だった。シーソー板をロックさせるための仕掛けとして、捕獲具の両サイドの金属板に穴を開け、内側に倒れ込む金属の小片を備え付けた。

 

その金属の小片には長さの違う2つの爪があって、それぞれが違う高さでシーソー板をロックさせる。つまり、1回目のロックではしっぽが外に出ていても捕獲できて、ネズミが振り返ってしっぽが抜けた後に2回目のロックで完全に出られなくする、長いしっぽが外に出ていても捕獲できるように2段階で入口を閉じる構造だ。充分知恵を絞ったつもりだが特許にはならなかった。

 

事情を説明し、許可を取って、大阪府民牧場でテストをした。ハツカネズミとドブネズミは生息しているが、クマネズミはいないようだった。動物に与えるための餌が入った袋がいくつも積み上げられている場所があって、ハツカネズミが袋をかじるとの事である。

 

なかなか捕まえられないクマネズミ(写真/PIXTA)
「鼠小僧」の代表、クマネズミ(写真/PIXTA)

 

設置した翌日には捕まっているという連絡があった。わずかな力でシーソー板が回転し仕掛けがロックするので、ハツカネズミのような軽い個体まで捕まえることが出来た。ハツカネズミがシーソー板を乗り越えたことは間違いないので、シーソーの動きを全く気にしていないことがわかる。大きい箱に小さいハツカネズミが1匹。

 

白イメージがあるハツカネズミだけど(※写真/PIXTA)
白イメージがあるハツカネズミだけど(写真/PIXTA)

 

本当はこんな色。(※写真/PIXTA)
本当はこんな色。(写真/PIXTA)

 

同じ場所で翌日にも捕獲できたことから、仕掛けがロックする時に音がほとんどしないために危険性が全く認識されていないことが分かる。

 

ハツカネズミの捕獲を目的とした仕掛けではないので、次に、ドブネズミが出るというウサギ小屋でテストを行った。

次ページ二段階ロック成功か…?すし屋に設置したら事件が!

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