相続税の税務調査とはどのようなものか?
遺産を相続すると、税務署から税務調査が入ることがあります。税務調査では、税務署の調査官が実際に申告書の内容を確認しに来ます。税務調査の結果、申告内容に万が一漏れが見つかった場合には、ペナルティとして追徴税が課せられます。
相続税の場合、調査は相続税の申告書をもとに行われます。申告内容に誤りがないか、財産の計上漏れはないかなどを、実地調査を中心とするさまざまな方法で調査するのです。税務署では申告漏れの有無について非常に厳格な調査を行い、申告漏れが疑われる場合には、その確認をするために税務調査を行います。
調査自体は、9割以上が税務署員の質問に対して相続人(※1)が答えるというものです。
(※1)相続人:相続財産を受け継ぐ側の人
相続税の税務調査が来るとどうなるのか?
万が一税務調査が入った場合には、約81.8%という高い確率で申告漏れが発見されます。また、調査1件当たり平均で約489万円の追徴課税が課せられます。ただ、この489万円というのは調査の入った案件全体での平均額なので、申告漏れが見つかった人に限った場合、平均追徴課税額は約597万円に上ります。
いってしまえば、税務調査の通知の電話を受けた時点で、約80%という非常に高い割合で、600万円程度の追徴課税が発生するということです。
また、税務調査により追加で税金を払わなければならなくなった場合、単に金銭面の問題だけではなく、家族内でのいさかいにつながることもあります。例えば、税務調査によって、相続人の一人がこっそり被相続人(※2)の預金を引き出してため込んでいたことが発覚し、他の相続人とトラブルになるケースなどがあります。
(※2)被相続人:相続財産をのこして亡くなった立場の人のこと
どんな人に相続税の税務調査が来るのか?
国税庁の統計によると、相続税において税務調査の対象となるのは約22%と、およそ4〜5人に人の割合です(平成25年の国税庁統計より)。
では、税務調査に入られるのはどのような人でしょうか?
① 申告書のレベルが低い人
相続税の申告書の内容に不備があれば、税務調査が入る可能性が高いです。申告書を機械でスキャンして、簡単な計算間違いなどをチェックします。計算に不備のある人は調査対象として浮かびあがります。
② 納税額が高い富裕層
税務署は、調査対象を選定するため、「富裕層」を管理する独自のリストを持っています。高額商品(不動産や、高級車など)の購入者や国債保持者などをチェックし、KSKシステム(国総合税管理システム)に情報を蓄積して、リストを作成しているそうです。
そうして蓄積された情報から、税務署は調査対象の総資産額の予想を立てます。その予想と実際の申告書を比較して差が大きい場合には、税務調査が入る可能性があります。特に東京や大阪のような大都市圏では、相続税の納税対象者が多いため、この「富裕層リスト」を活用して調査対象を選定することが多いようです。
③ 金融資産を多く相続した人
金融資産と不動産であれば、金融資産を多く相続した人の方が、調査が入りやすいです。例えば、同じ3億円を相続したとしても、3億円分の土地を相続した人と、3億円分の現金を相続した人では、後者の方が圧倒的に調査の入る確率が高いです。
なぜなら、土地など不動産の場合、金融財産に比べて解釈論になりがちだからです。解釈論になると指摘が難しいため、調査官としては金融資産を指摘したほうが簡単に追徴できるのです。
④ 税理士をつけず、自分で相続税の申告をした人
相続税の申告書には、第1表から第15表まで、15種類以上の書類が存在します(各表1種とは限らないため)。 そのうち第1表(1枚目)の一番下には税理士の名前を記入する欄があるのですが、ここが空欄だと、税理士をつけずに素人が自己申告したということで、調査対象になりやすい傾向があります。税理士がついてないことで、申告内容に穴がありそうだなと思われてしまうのです。
⑤ 相続税がかかるのに無申告の人
相続税がかかるのに申告していない、いわゆる無申告の人にも当然調査が入ります。税務署は、所得税の申告書などから、アパートを経営していたり、土地があることを、しっかりと把握しています。よって、相続税の無申告がばれないということはあまり考えられません。