投資家はもちろんのこと、将来に備えるため、今まで投資への関心が薄かった人までもが、株式投資をはじめとした「資産運用」に注目しています。実際「投資初心者」と検索をすると、おびただしい量の手解きサイトが表示されます。情報取集の手段としてぜひ頼りたいところですが、金融業界で長く活躍する紫垣英昭氏は、「初心者の他力本願」を危険視しています。本記事では、「雰囲気買い」で大損する仕組みを踏まえ、投資初心者が陥りやすい思考について解説します。

初心者の9割は他人の意見を鵜呑みにして損をする

他人の意見・情報を鵜呑みにする――この他力本願な姿勢は、初心者がもっとも犯しやすい間違いであり、ほぼ確実に大損を招きます。読んで字のごとく、売買について自分なりの判断基準を持つことなく、他人の意見やさまざまな情報に完全に頼っているためです。証券マンが推奨する銘柄にそのまま乗ってしまった。あるいは、Webサイトからダウンロードした各種レポートに掲載されている銘柄を買ってしまった。投資顧問会社が有料で提供する注目銘柄の情報を鵜呑みにしてしまった・・・。

 

株価を左右するような情報が一般の個人投資家の目に触れる頃、往々にして株価はすでに高値圏にあるものです。それを知らずに買った後、意気揚々として相場を眺めていると、「売り」が殺到し、気が付けばいつの間にか含み損を抱えていた・・・ということが頻繁に起こってしまうのです。

 

「織り込み済み」であることがわからない投資初心者…。 (画像はイメージです/PIXTA)
「織り込み済み」であることがわからない投資初心者…。
(画像はイメージです/PIXTA)

 

情報は多ければ多いほど有利に働くように思いがちですが、情報過多がかえって投資判断を誤らせることはよくあります。株をかじったことのある人や、これから株をやってみたいと思っている人の多くは、経済ニュースに敏感です。日頃から新聞、マネー誌、経済情報番組などをチェックしていることでしょう。M&A、業績上方修正、新商品発表、工場の増設・・・。日経新聞のトップを飾る記事は注目度が高く、その日の値動きを大きく左右することもよくあります。

 

例えば、日経新聞にひと通り目を通すことを日課としている人が、以前読んだ「水素インフラ関連企業が好調」という記事を覚えていた場合、今日の朝刊でたまたま目にした関連企業名に反応して、その日のうちに関連銘柄を買ってしまうことがあります。

 

しかし多くの場合、マスメディアで発表される頃には、株価はこうした好材料をほぼ織り込んでおり(株価に反映されている状態を「織り込み済み」といったりします)、すでに高値圏にある状態です。もちろん、さらなる上昇を見せるときもありますが、買ったとき以上に高く売ることができなければ損をしてしまいます。

 

当然、その銘柄を以前に買っておいた人は、高値圏にあるうちにいち早く利益を確定させようと、どんどん売りを出してきます。そのため、買ったそばから株価がジリジリと下がり出すという現象が起きます。こうなると、個人投資家の多くは恐怖感から損失覚悟で売りを出していくので、結局、市場が終わる「大引け」のときには、安値付近で取引が終了してしまうのです。

どんな情報も、「出し手」が強く「受け手」が弱い

日頃から他人が発する情報を頼りにするクセがついていると、何事も自分では判断できなくなり、最終的には情報の出し手に操作されやすくなります。そのため、買った銘柄が下がるとなぜ下がったのか、その理由をネットの掲示板で探し始める。上がったら上がったで、その理由もまたネットの掲示板で探し始める・・・というように、「自分の投資判断が間違っていない」ことの理由探しに躍起になり、見知らぬ誰かの無責任な情報に振り回されてしまうのです。

 

今やインターネットにアクセスすれば、買いたい商品や行きたいお店の口コミ、レビューなどが簡単に手に入る時代です。口コミの件数が多かったり高評価のレビューが書かれていたりすれば、多くのユーザーがその商品やお店に満足しているようだ、という安心感を得られます。そのため、こういった情報を日頃から参考にしている人も多いでしょう。同様に、買おうかどうか迷っている銘柄を誰かがネットの掲示板などで薦めていても、なんとなく安心感を覚えるものです。

 

しかし、覚えておいていただきたいのは、情報には必ず「出し手が強く、受け手が弱い」という力関係(いわゆる「情報の非対称性」)があることです。インターネット上で他人が発信する情報などの中には、悪意はなくても不正確なものがありますし、個人投資家をコントロールしようとするなど何らかの思惑があって故意に書き込まれたものもあります。いずれにしても信ぴょう性に欠ける情報が大量に氾濫しているのが、現在の社会なのです。

 

このように、自分の判断基準を持つことなく他人の意見・情報ばかりを鵜呑みにしていると、損が大きくなって、元手をどんどん減らしてしまう、ということを肝に銘じてください。

「雰囲気買い」をすると、なかなか売れないワケ

投資に興味はあってもまだ始めていない人が、上昇局面の真っ只中にいると、乗り遅れてしまうという焦りから、こんな思考に陥ることがあります。

 

――株のことはよく分からないし、あまり新聞も読まないけれど、このところ日経平均株価が上がり続けていることは知っている。とりあえず手元に300万円があるから早く何か買わなくては。有名企業の株なら大きく損することはなさそうだ。一時的に下がったとしても、有名企業の株ならいつかまた回復するだろう――。

 

こうした、なんとなくの雰囲気買いタイプの人は、何を買ったらいいのかという銘柄選びができないために、相場が盛り上がっている状況に流されるまま、雰囲気で売買してしまうのです。投資経験のある人でも油断はできません。

 

1980年代後半から1990年過ぎまで続いた昭和のバブル期に、株でひと儲けした経験がある人の中には、株なんて一時期下がっても放っておけばそのうちまた上がると信じている人が大勢います。そういった現状にそぐわない思い込みがあると、大きく値下がりしても、のん気に構えてなかなか損切り(買ったときよりも安い金額で株を売ること)ができません。逆に値上がりしても、もっと上がるだろうからここで売るのはもったいない、と考えてなかなか利益確定をしようとしないのです。

 

結局はどちらに転んでも、売ることができない――。こういったタイプの人は、リーマン・ショックで大損することもない代わりに、日経平均が半年で5000円も上がるような強烈な上昇相場であっても大勝ちすることはできません。投資についての考え方やスタンスが変わらない限り、いつまで経っても無駄な期待をしながら、どんどんお金を減らしていくだけなのです。

 

 

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「持っていれば必ず上がる時代」はもう終わった

昨今はどんな銘柄でも、株を持ってさえいれば誰でも簡単に儲けられるという時代ではなくなりました。昭和のバブル期がなぜあれほど華々しかったのかといえば、ベースアップをともなったインフレが長らく続いていたからに他なりません。現在のように、ごく限られた企業のみ賃金が上昇するのではなく、大企業から中小零細企業に至るまで日本全体の賃金が上がっていたのです。

 

株価は好調でも実体経済への効果が感じられない現在の相場環境においては、バブル期と同じ思考で投資をして失敗をするのは、ある意味当然といえるのです。「持っていればいずれは上がるだろう」「名前を聞いたことのある企業の株なら大丈夫だろう」「配当や株主優待もあるので、少しくらい下がっても大損するわけではない」このような言い訳をしながら「なんとなく」の雰囲気だけで売買を繰り返していては、株によって資産を増やすことは、難しいと言わざるを得ません。

 

 

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初心者でもがっぽり儲かる大化け「低位株」投資法

紫垣 英昭

幻冬舎メディアコンサルティング

アベノミクス効果や日銀の金融緩和により、賑わいをみせている日本の株式市場。昨年からはじまったNISAに続き、ジュニアNISAの創設や教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長など、若年層にむけての資産形成支援も充実…

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