家族が亡くなると、様々な手続きが発生
大切な方が亡くなった…その時、耐え難い辛さが身を襲います。私自身も、父を亡くした時は、今思い出しても悲しみが湧き出てくるほどにほんとうに辛い時間でした。しかし、遺族はその悲しみに浸ってばかりもいられない現実があります。
お葬式を出すだけでも一大事なのに、遺された家族は、その後に、保険・年金などの手続きなどで役所や銀行などを駆けずり回って手続きをしなくてはなりません。それぞれに手続きの期限が決まっているものもあります。そして、どなたにも相続は必ず起こります。
本連載では、家族が亡くなった時に、何をしなくてはならないのかをわかりやすく紹介していきます。年金等で遺族が手続きをしないと受け取れなかったり、相続税の申告は10ヵ月以内にしないと特例が受けられなかったりなど、知らないと損をしてしまうものもあります。本連載を参考にして、忘れずに手続きをしてください。
公的年金制度の仕組みをおさらい
身内が亡くなったときの年金手続きには大きく分けて2種類あります。一つは、年金の受給停止手続きです。未支給年金がある場合には、合わせて手続きします。
もう一つは遺された家族が受け取ることができる遺族年金の手続きです。亡くなった方が一定の条件を満たすと、遺族は遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取ることができます。手続きは加入している公的年金の種類によっても変わります。
手続き方法を紹介する前に、公的年金制度の仕組みについて簡単におさらいしておきましょう。加入している公的年金制度は、働き方によって図表1のように分かれています。
民間企業の会社員や公務員等は、国民年金の第2号被保険者と呼ばれ、国民年金と厚生年金に加入しています。会社によっては企業型確定拠出年金(DC)や確定給付企業年金(DB)に加入している場合もあります。また、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入することもできます。
公務員は以前、国民年金と共済年金に加入していましたが、現在は厚生年金と共済年金が一元化されました。
自営業等の場合には、国民年金のみに加入し第1号被保険者と呼ばれています。第1号被保険者の国民年金保険料は収入額にかかわらず、一定額を支払っています。
国民年金の第2号被保険者に扶養されている配偶者の場合には、要件を満たせば自分では直接保険料を負担せずに国民年金に加入することになります(第3号被保険者)。
なお、いずれの職業の場合も個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できます。加入できる金額は職業などによって異ります。
受給停止が遅れると、手続きがさらに複雑化
■受給停止の手続き
年金を受け取っていた方が亡くなった場合には、年金の受給停止手続きをしなくてはなりません。
そもそも年金は年6回、偶数月の15日に前2ヵ月分が支給されます。たとえば、2月に支給される年金は12月分と1月分になります。年金は亡くなった月の分まで受け取ることができます。
受給停止手続きは、国民年金は亡くなってから14日以内、厚生年金は10日以内に届け出ることになっています。手続きを忘れていると、年金が支払われてしまい、その分を返還しなければならなくなります。
受給停止手続きをするには、年金事務所または最寄りの街角の年金相談センターに年金受給権者死亡届を提出します。その際には、図表2の書類を添付します。
マイナンバーが日本年金機構に収録されている方については、マイナンバーで確認できますので年金受給権者死亡届の提出は不要です。
届け出が遅れると、年金が支払われてしまうことがあります。過払いの年金を返却する際は、全額を一括して支払わなくてはならず、手続きも大変ですので、すみやかに年金受給権者死亡届を提出するようにしましょう。
未支給分の年金は「一時所得」として受給可能
■未支給年金の受給手続き
一方で亡くなった方が受け取ることができたはずの年金が、口座凍結で振り込まれなかったなどで、未支給になっている年金がある場合には、親族などが受給できます。受給できる親族は優先順位が決まっており、生存している方の中で優先順位が最も高い人が受給できます(図表3参照)。
手続きの際には、「未支給【年金・保険給付】請求書」に図表4の書類を添えて、年金事務所または最寄りの街角の年金相談センターに請求します。
なお、亡くなった方の未支給年金(以下、年金)は、その年金を受け取った方の一時所得に該当し、確定申告が必要になる場合がありますので注意が必要です。年金を受け取る方のその年分において、その年金を含む一時所得の金額※は以下のように計算します(図表5参照)。