学習意欲やチャレンジ精神には「自己肯定感」が不可欠です。自己肯定感がどう育つかは「親次第」、つまり家庭での教育が重要です。開成中学校・高等学校の校長を9年間務めた筆者が、思春期の男の子の「自己肯定感」を高め、その子の能力を開花させる方法を紹介します。※本連載は、東京大学名誉教授の柳沢幸雄氏の著書『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)より、一部を抜粋・再編集したものです。

「うちの子、本当に無口で…」という親の誤解

私はよく講演会で、「これからみなさんに英語で、1分間自己紹介をしてもらいます。2~3分の時間を取るので考えてください」と伝えます。会場はいきなりシーンとなります。実際にやってもらうかは、その日の会場の雰囲気によるのですが、なぜこれをするかと言えば、「子どもにとってのしゃべること」を感じ取ってもらうためです。

 

子どもにとっては、母国語でさえもある意味“外国語”です。なぜなら、初めてそれを身につけ、使えるようにならなければならない言語だからです。使いこなすためには、それなりの年月が必要です。例えば、親が英語を学んできた期間を、中学、高校、大学の10年間とすれば、10歳の子どもはそれと同じくらいの期間しか日本語を学んでいないわけです。

 

多くの保護者の方が英語で1分話すのを躊躇(ちゅうちょ)するのと同じように、10歳の子どもにとって人前で話すのは大変なことなのです。頭の中で単語をつなぎ、文法的に論理的におかしくない文章をつくるのは、母国語である日本語でも、頭を使います。

 

つまり、子どもに話をさせるということは、お子さんの頭を鍛錬するいい機会になるということです。そのために親は、相手がどんどん話をするように仕向けなければなりません。

 

「うちの子は、本当に口下手で困ります」という相談もよくあるのですが、そういう子のお母さんは、一様にとてもおしゃべり(笑)。昔、私は塾を経営しており、よく親子面接をしていました。話すのが上手でない子の面接では、子どもに質問しても先に母親が答えてしまうことがよくありました。

 

「お母さん、これはお子さんに聞いているんだから、ちょっと待ってて」と何度言ったかわかりません。子どもに話してほしいのであれば、時間配分を考えて会話をしなければなりません。無意識でいると、母親が8〜9割、息子が1〜2割になってしまいます。せめてこの数字を、子2:親1くらいにまで縮めましょう。話す内容はどんなことでも構いません。息子さんが話しやすいトピックでいいのです。

会話が続く2つのリアクション…「相槌」と「5W1H」

普段はしゃべらない息子さんが話をし出したら、じっくりと聞いてあげてください。そして、なるべく話を引き出してあげましょう。そのために必要なのは、6つの疑問詞「5W1H」です。

 

●いつ(When)

●どこで(Where)

●だれが(Who)

●なにを(What)

●なぜ(Why)

●どのように(How)

 

これらの質問を、相槌(あいづち)の間に挟むだけで話がしやすくなるものです。

 

「へえ、そうなの。いつの話?」「へえ、どこへ行ったの?」「誰と行ったんだっけ?」このように、1個1個聞くと、途切れ途切れの話もつながるようになります。

 

気をつけたいのは、意見をしないこと。何か意見すると、たいてい的外れになり、「知りもしないくせに、もういいよ」と話が終わってしまいます。息子が話し出したら、とにかく聞き役に徹して、「子2:親1」の法則を忘れないようにしてください。

 

 

柳沢 幸雄

東京大学 名誉教授

 

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男の子の「自己肯定感」を高める育て方

男の子の「自己肯定感」を高める育て方

柳沢 幸雄

実務教育出版

日本の高校生は世界一。しかし、そこから先は海外の学生に抜かれてしまう…。そこには「自己肯定感」が大きく関係しているのです。 男子教育のスペシャリストである開成(東大合格者数39年連続1位!)の元校長先生が、ハー…

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