劇的な効果を唱える「民間療法」との向き合い方
サプリメント、生薬、何とかのキノコ、何とかの壺、ある種の宗教団体活動に至るまで、「民間療法」には多様な姿があります。それらは信用できるのでしょうか。
信用するかどうかは各人の自由なので、信用したければ信用し、そうでなければうさんくさいと思うだけかもしれません。まあ、そういう考え方もありでしょう。イワシの頭も信心から。
私個人は民間療法を肯定も否定もしていません。通常の病院で受ける医療と民間療法を根源的に区別する方法は存在しないように思います。ただ、民間療法が信用されるためには、以下の条件を満たしている必要があると思います。もっとも、ほとんどすべてと言ってもいいですが、民間療法はこれらの条件をクリアしていません。
条件その1 「何にでも効く」「絶対に効く」と主張している療法は信用しないほうがよい。
どのような条件においても、絶対に効く治療法はこの世に存在しません。また、そのよ うな証明もできません。例えば、 10人に使って効いた療法だからといって、「あなたに」 効くという保証はありません。オールマイティを謳った療法は信用しないほうがよいです。
条件その2 成功例しか示してくれない療法は信用しないほうがよい。
同様に、「うまくいった」ケースしか開示してくれない療法には要注意です。そのよう な治療法は存在しません。もし有効性を検証したかったら、その療法を用いた人たちすべてのデータを開示してもらうべきです。効かなかった症例も開示すべきです。効かなかった症例もちゃんと開示されていれば、むしろそれは信用に値する治療法です。一見逆説的ですが、そうなのです。もっとも、そのデータそのものがねつ造(やらせ)でない保証は担保できないので、疑い続ければ、究極的には信用できる民間療法はゼロなのかもしれませんが。
いずれにしても、これらの条件を満たすことを義務化したら、世にある民間療法の大多数は消滅する可能性が高いと思います。本書を読んでいる方がもし民間療法の提供者で、「そんなことはない、うちの治療は大丈夫」とおっしゃるのでしたら、ぜひこの2つの条件をクリアしてみてください。
神戸大学医学研究科感染症内科教授
岩田 健太郎