●日経平均は先々週、23,300円台をつけたが、上値は重く、材料難のなか方向感に欠ける動きに。
●日経平均のトレンド自体は上向き、また官製相場の色合いが濃いため、大きく下げにくくなっている。
●年度末の日経平均は24,000円へ、長期では業界再編増が見込まれ、企業側の情報が重要に。
日経平均は先々週、23,300円台をつけたが、上値は重く、材料難のなか方向感に欠ける動きに
日経平均株価は8月13日、23,000円台を回復し、14日には一時23,338円79銭の高値をつけました(いずれも取引時間中、以下同じ)。東京証券取引所のデータによると、この週は海外投資家が日本株を約3,664億円買い越し(東京・名古屋2市場、1部、2部と新興企業向け市場の現物売買代金)、今年最大の買い越し額となりました(図表1)。また、東証1部の売買代金は連日2兆円を超え、活況を呈していました。
しかしながら、17日の週に入ると、一転して東証1部の売買代金は連日2兆円を下回り、閑散とした相場になりました。日経平均株価の上値は次第に重くなり、21日は23,000円を下回って越週となりました。足元では、積極的な買い材料に乏しい一方、大きく売り込むほどの悪材料が出ている訳でもないため、日経平均株価はやや膠着感が強まり、方向感に欠ける動きとなっています。
日経平均のトレンド自体は上向き、また官製相場の色合いが濃いため、大きく下げにくくなっている
日経平均株価は、2013年5月高値と2018年1月高値を結んだ上値抵抗線と、2012年10月安値と2016年6月安値を結んだ下値支持線によって、上昇トレンドが形成されています(図表2)。今年3月の大幅な株安で、いったん下値支持線を割り込みましたが、その後は再びトレンド内に回帰し、現在も下値支持線付近で推移しています。この点から、日経平均株価のトレンド自体は、まだ上向きと解釈できます。
今の株式市場は、実体経済や企業業績よりも、政府の積極的な財政政策や中央銀行の緩和的な金融政策が株価に強く影響する「官製相場」の色合いが濃いといえます。とりわけ日本株は、日銀が金融政策の一環としてETFの買い入れを行っていることもあり、①新型コロナウイルスの感染動向、②世界経済の回復状況、③米中関係、④米大統領選挙について、よほど想定外の事態が発生しない限り、大きく下げにくくなっています。
年度末の日経平均は24,000円へ、長期では業界再編増が見込まれ、企業側の情報が重要に
先の決算発表では、厳しい内容の通期業績予想が目立ちましたが、①~④の材料が無難に消化される過程では上方修正の可能性が高いと考え、弊社は先週、年度末の日経平均株価の着地予想を23,400円から24,000円に引き上げました。また、少なくとも年度内は、コロナの影響が追い風となる業種(巣ごもり消費やデジタルトランスフォーメーション関連など)と向かい風となる業種(接触・対面型や景気敏感関連など)で業績2極化が見込まれます。
さらに数年単位では、行動制限が一定程度残ることで経済活動のオンライン化が進み、経済環境は低成長、低インフレ、低金利が続くと予想されます。企業はウィズコロナ時代で業績を伸ばすため、事業の選択と集中、統合や整理などを積極的に進めると思われます。それにより、競争が激化し、幅広い業種で業界再編やM&A(合併・買収)が増えることが想定され、今後は個々の企業が発信する情報が一段と重要なものになると考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本株の現在の立ち位置』を参照)。
(2020年8月24日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
シニアストラテジスト