●安倍首相が2週連続で病院を訪問し、市場の一部に安倍首相の健康問題への懸念が浮上した。
●岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、河野太郎防衛大臣は次期総裁選挙への出馬に意欲。
●仮に安倍首相辞任でも、新総裁は景気配慮の政策を継続へ、政局不安の株安は一時的とみる。
安倍首相が2週連続で病院を訪問し、市場の一部に安倍首相の健康問題への懸念が浮上した
安倍首相は8月16日から18日まで夏季休暇を取得していましたが、17日に都内の慶応義塾大学病院を訪れ、日帰り検診を受診しました。首相周辺からは、「休暇明けの体調管理に万全を期すため」との説明があり、安倍首相自身も19日、首相官邸で記者団に対し、検査は体調管理に万全を期すためのものと述べ、「これから再び仕事に復帰して頑張っていきたい」と話しました。
その後、安倍首相は24日の午前、再び慶応義塾大学病院を訪れましたが、首相周辺の話によると、「受診は医師からの指示で前回の続き」とのことでした。しかしながら、一連の流れを受け、同日の市場では、安倍首相の健康問題を不安視する向きもみられました。そこで今回のレポートでは、安倍首相の自民党総裁任期満了まで残り1年余りとなった現状、ポスト安倍の顔ぶれと、想定される今後の政局シナリオについて考えます。
岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、河野太郎防衛大臣は次期総裁選挙への出馬に意欲
次期総裁選挙への出馬に意欲を示しているのは、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、河野太郎防衛大臣です。岸田氏は、安倍首相が後継者として期待してきた人物で、9月に想定される内閣改造・党役員人事において(図表1)、幹事長に就任するか否かが大きな焦点となっています。石破氏は、安倍政権とは距離を置く姿勢をとっていますが、世論調査でも自民党支持層からも高い人気を誇っています。
河野太郎防衛大臣は、安倍政権で要職を重ね、世論調査でも次の首相にふさわしい人物として、一定の支持を得ています。また、ここにきて、菅義偉内閣官房長官も、ポスト安倍として急浮上しています。ただ、菅氏は政治家として最終的に総理大臣を目指すことは考えていないと発言しています。この他、茂木敏充外務大臣も、手堅い外交手腕で政権幹部の評価が高く、ポスト安倍候補と目されています。
仮に安倍首相辞任でも、新総裁は景気配慮の政策を継続へ、政局不安の株安は一時的とみる
今後の政局について、安倍政権の支持率が低迷している現状(図表2)、衆議院の解散・総選挙が年内に行われる可能性は低いように思われます。また、安倍首相が自民党総裁の任期満了まで続投すれば、少なくとも政局不安による株式市場の動揺は回避されると考えます。注意すべきは、安倍首相が任期途中で辞任した場合です。前述のポスト安倍メンバーは、当然ながら現段階で明確な政策方針を示している訳ではありません。
そのため、仮に安倍首相が辞任となれば、新総裁の政策方針が明らかになるまで、日本株は海外勢を中心とする売りに押され、いったん調整色を強める恐れがあります。ただ、新型コロナウイルスの感染が収束していない限り、誰が新総裁になっても、景気に配慮した政策は当面継続される可能性は高く、政局不安による株安が発生しても、一時的なものになるとみています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『安倍政権を巡る状況整理』を参照)。
(2020年8月25日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
シニアストラテジスト