世間では「在宅死」「在宅介護」を望む人が圧倒的に多いものの、実際には「自宅では手に負えない」と断念する人が多い実態があります。在宅療養を非現実的なもの考える理由には、病院に比べて医療設備が整わないことや、専門的な知識がないゆえ、適切な対処を行えないなどのほか、「つきっきりでお世話することは不可能」という事情があります。実際、親身にお世話をする介護家族ほど疲弊してしまい、断念せざるを得ないケースが絶えません。※本記事は『大切な親を家で看取るラクゆる介護』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

夜間のトイレ介助は「介護側が眠れる方法」を重視

ラクゆる介護のポイント⑤【排泄】

トイレやおむつは、介護する人が「夜に眠れる」方法を考える

 

在宅療養では、トイレの介助も大きな問題になることがあります。要介護3、4くらいで介助があればトイレで排泄できる人では、高齢者がもよおすたびにトイレへ連れていき、終わったら手洗いをさせて居室やベッドに戻すというのを、一日に何度となく繰り返します。介護をする人の負担は小さくありません。

 

特に問題になるのは、夜間のトイレです。高齢者のなかには夜間頻尿があり、夜中に3回、4回とトイレに行きたいと訴える人がいます。まじめなご家族は、就寝中でも高齢者に呼ばれるたびに起き、トイレに付き添おうとされますが、そういう生活はとても1年も2年も続けられるものではありません。どこかで必ずお手上げになります。

 

夜間のトイレ介助は、在宅会をを続けるうえで非常に重要
夜間のトイレ介助は、在宅介護をを続けるうえで大きな壁となりがち

 

私はそういうご家族にはよく「夜は呼ばれても、起きなくていいですよ」とアドバイスしています。高齢者が呼ぶ声で眠れないとご家族が訴えるときは、「睡眠薬を出しますから、あなたはぐっすり寝てください」と伝えることもあります。

 

つまり、夜だけはベッド横にポータブルトイレを置いたり、おむつにしてもらうなどして、夜間はご家族がしっかり眠ることを優先するのです。

 

そうでなければ在宅療養は続けられませんから、ここはある程度、高齢者に我慢をしてもらうことも必要でしょう。

 

ほかに、もし他のサービスとの兼ね合いなどで可能なら、夜間の訪問介護を利用する方法もあります。夜間にホームヘルパーに訪問してもらい、トイレ介助やおむつ交換をお願いするわけです。

 

夜間に他人が家に入ることには抵抗があるご家族も多いかもしれませんが、貴重品や鍵の管理方法などをよく考えたうえで、利用するのも一つの選択肢です。

「管」を入れれば、排尿でのおむつ交換はほぼ不要に

ベッドで過ごす時間が長くなった人では、おむつ交換の回数を減らすために、尿道留置カテーテルにする場合もあります。

 

これは尿道口に細い管を入れたままにしておき、尿が管を通って反対側の先にあるバッグ(蓄尿袋)に溜まるしくみです。介護をする人はバッグに溜まった尿を1日1~2回捨てるだけでよく、排尿でのおむつ交換はほぼ不要になります。おしっこの管を入れるというと痛そうに思えるかもしれませんが、多くの人は慣れてしまえばそれほど気にならなくなります。尿路感染症のリスクがあるなど注意点もありますが、尿については、この方法で管理がラクになるケースが多いです。

 

一方、排便のほうは、それぞれのケースで対応を考える必要があります。便秘が続いて自力で排便がむずかしいときは、訪問看護師が便を出すケア(摘便)をすることが多いと思います。逆に便がゆるいときは、おむつ交換がよりたいへんになります。そういうときは、便を固める薬を処方することもあります。薬がうまく合えば、便の状態がよくなります。

 

排泄の悩みは、高齢者の状況によって変わっていきます。気になることがあるとき、介護で負担を感じるときは、在宅医や訪問看護師に相談をしてください。

 

【ラクゆる介護のポイント⑥~⑩】については、次回以降に詳述します。

 

 

井上 雅樹

医療法人翔樹会 井上内科クリニック 院長

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