10年で手取りが減っていること、気づいていますか
■私たちはなぜ〝リッチ〟になれないのか?
人並みの労働時間で、好きなことにお金と時間をかけられる生活を「リッチな生活」と定義すれば、ほとんどの日本人はそれを実現できていません。毎朝、ギュウギュウ詰めの電車に乗って会社に通い、遅くまで一生懸命働き、まじめにお金を稼ぐ。これまでの日本人が美徳としてきた文化ですが、残念ながらそれだけでは豊かな生活を送れないのが今の日本社会です。
私たちはなぜ、〝リッチ〟になれないのでしょうか。まず、そもそも毎月の給料がなかなか上がらない現状があります。
その背景としては、「新卒一括採用」「年功序列」「終身雇用」「労働者の権利が強い(クビにできない)」という日本独特の雇用慣行を指摘することができます。こうした構造的な問題から、欧米では当たり前となっている「転職やヘッドハンティングで優秀な人を高く雇い、ダメな人はクビにする」という新陳代謝が日本では一切ありません。その結果、能力の低い社員に無駄なコストがかかり、企業側に社員の給料を上げる余力がなくなっているのです。
企業の売上げに大きく貢献している若手よりも、全く仕事をしない50代のほうが、給料が高いというのが日本の企業文化です。その結果、優秀な若手がどんどん会社を辞め、会社にぶら下がっていたいだけの〝ダメ社員〟の比率が上がるという負の連鎖が生まれています。
また、給料が上がらない理由として、他に以下のような点も挙げられます。
① マーケットが縮小する日本市場への不安から企業は内部留保をどんどん増やす
② 一人当たりの生産性が低い(世界27位)
③ 非正規雇用の激増(40%)による人件費削減
④ グローバル化する株主圧力
①、②、③の理由から、企業利益の減少、上がらない給料という傾向は今後も続くでしょう。一方で、④の事情から各上場企業は株主の要求に応えて、より多くの配当を出すことを求められています。このような問題から、多くの日本企業は、コスト増大により体力が弱まることを恐れ、給料を上げることに消極的にならざるを得ないのです。
さらに給料の問題の他に、税金や社会保険料の負担の重さも大きな問題です。
サラリーマンの給料からは、税金や社会保険料があらかじめ差し引かれます。具体的には所得税、住民税、健康保険、厚生年金、雇用保険などです。その結果、たとえ年収が1000万円あっても、手取りは600〜700万円にまで減ってしまいます。給料が上がったとしても、税金や社会保険料の負担が重たいために、手取り額はほとんど増えません。
実際にこの十数年間、年金や保険料の負担額は上がり続けています。2002年から2017年の間で年収500万円の人は手取りが35万円、年収700万円の人は手取りが50万円も減っています。多くの人はこれだけ手取りが減っていることを知りません。サラリーマンは従順なので、国から搾取されていることに文句も言わず、黙々と働き続けているのです。