生きる喜びは対人関係からしか生まれない
だからといって、他者と関わりを断てばすべて解決、というわけではありません。あらゆる人間の悩みは対人関係が問題だとする一方で、アドラーは「生きる喜びは対人関係からしか生まれない」とも説いているのです。
われわれのまわりには他者がいる。そしてわれわれは他者と結びついて生きている。人間は、個人としては弱く限界があるので、一人では自分の目標を達成することはできない。もしも一人で生き、問題に一人で対処しようとすれば、滅びてしまうだろう。自分自身の生を続けることもできないし、人類の生も続けることはできないだろう。そこで、人は、弱さ、欠点、限界のために、いつも他者と結びついているのである。自分自身の幸福と人類の幸福のためにもっとも貢献するのは共同体感覚である。(『人生の意味の心理学』より抜粋)
このように、アドラーは自分の幸せな人生を実現するには、何よりも対人関係が重要だと言い、その対人関係のことを「共同体感覚」と表しています。「共同体感覚」とは簡単に言えば、他者を仲間とみなすということ。アドラーは、どんなにお金持ちであっても、家族など自分を支える仲間が周りにいない人は幸福ではないとも言っています。
そう、私たちは他者と関り、共同体感覚を育んでいくことで幸福を得ているのです。夫婦も、違う者同士が認め合い、尊重し合うことで共同体ができあがります。そして、やがてそれが夫婦として長い人生を歩んでいく喜びにつながるのです。
東野 純彦
東野産婦人科院長