私が得た結論は「信長は勝利の予感のなかで勝利している」ということです。つまり「勝利の予感」が持てなければ、まだ圧倒的な努力・圧倒的に周到な準備をしていないということなのです。
信長は、どうやってフロイスの本音を引き出したのか
信長は人の話を聞くときには、己を初期化して、聞きました。己を初期化してまで話を聞きたいと思わない輩とは、信長は口を利こうともしませんでした。信長はいいとこ取りをしようとはしなかったのです。いいとこ取りとはつまみ喰いです。信長はつまみ喰いはしませんし、許しません。
信長はフロイスの話を、自分を初期化して聞きました。信長は訊き上手でもあり、聞き上手でもあったのです。初期化の対義語はバージョンアップです。信長はバージョンアップを許しません。
フロイスの本音を聞き出せたのも、信長が自分を初期化して、フロイスの話を聞いたからです。そして、キリスト教(当時)の凄まじい「人間観」を知ったのです。つまり、白人のみが人間であり、キリスト教徒のみが人間であり、しかし、有色人種は人間ではなく奴隷であり、異教徒は悪魔ゆえに殲滅せよ……。
信長はそんな彼らへの対抗策を講じました。日本を封建制から資本主義国家へ誘い、「富国強兵」・「殖産興業」の旗を立てました。それが「天下布武」・「永楽通宝」の旗印で、ここは信長の圧巻なところです。
また、信長は秀吉や勝家・利家の長所を伸ばすことだけを重んじていたわけではありません。人生で勝つには、あるいはビジネスで勝つには、自分の武器を磨くことも必要ですが、同時に、欠点にも目を瞑るわけにはいかないのです。なぜなら、99%の長所を1%の短所がすべて破壊してしまうからです。
ところで、かつてとんでもなく強いボクサーがいました。マイク・タイソンです。まるで野獣でしたが、攻撃されたら弱かったのです。それで、あっけなく消え去りました。すべてはトレードオフです。タイソンが攻撃が強かったのは、防御が弱かったからです。攻撃と防御はトレードオフなのです。ですから、攻撃が強いといったところで、あるいは防御が強いといったところで、それはたいした価値でもないのです。