長所の裏には短所が隠れているからです。と同時に、短所の裏には、長所が隠れています。
厳しい頂上決戦では欠点のせめぎ合いになりますが、同時に、長所を封じるせめぎ合いにもなります。
信長は「勝つ予感のない戦」はしない
今度はイチローを思い出してください。年間262本のヒットを打ったときでさえ、イチローはガッツポーズをしたでしょうか?
信長は、もしかしたら、桶狭間ではガッツポーズくらいはしたかもしれませんが、長篠でも、一乗谷でも、イチローであったと思うのです。信長は勝利の予感がある戦でなければ、決して戦場には出ませんでした。つまり勝つ予感のない戦は信長はしなかったのです。
イチローは勝利の予感(ヒットを打つ)のなかで、勝利している(ヒットを打っている)のです。信長も、イチロー同様、勝利(相手を壊滅させる)の予感の中で、勝利している(相手を壊滅させている)のです。
では、勝利の予感の中で勝利するとは、どういうことをいうのでしょうか?
学習を例に取れば、まず得意科目をつくる。その次に不得意科目に焦点を当て、その不得意科目に時間をかける。点数があがるまで努力する。その上で、さらに得意科目の点数をあげる……。そうやって生徒はオールラウンドプレイヤーになっていくのです。
そして成績を下げられない重圧を背負って学習することが、子どもたちができる勝利の予感の中で勝利する体験だと私は思っています。
さて、桶狭間でも、長篠でも信長は勝ちました。では桶狭間とはどんな戦いだったでしょう。奇襲、正面突破、はたしてどちらだったのでしょうか。長篠とて同じです。鉄砲の三段撃ちはほんとうにあったのでしょうか。信長の「鉄甲船」は大坂湾でどのような戦いをしたのでしょうか……。
ところで、霊長類最強女子を誇った吉田沙保里氏は、得意技の高速タックルを封じられて負けました。相手選手はあろうことか、吉田氏の親指を取ってきました。得意技など、じつは知れたものです。得意技を封じられて負けた最強のチャンピオンは、ボクシングでも柔道でも、一人や二人ではありません。