「俺がやると泣きだすから」はただの言い訳
【拓郎と聡美の事例】
拓郎さんは子どもが生まれてからというもの、退社時間を早めていました。
19時前には家に着き、食事前には子どもをお風呂に入れる。これが拓郎さんの日々の役割です。
晩ごはんの支度で忙しい時間帯に、夫がお風呂に入れてくれるのは、妻の聡美さんから
してもすごく助かっています。
しかし、困ったことがありました。
拓郎さんが子どもをお風呂に入れると、かなりの確率で大泣きしてしまうのです。
そのたびに「おーい。泣き出したぞ」と声がかかるので、聡美さんは料理の手を止めて、様子を見に行かなくてはなりません。
その結果、結局聡美さんが面倒を見るケースがほとんどで、子どもをお風呂から出したあと、料理を再開して食卓を整えるのが常でした。
あるとき、いつものようにお風呂を終えて拓郎さんが子どもの面倒を見ていると、また泣き出してしまいました。
そして「抱っこしても泣き止まないんだよなあ」とキッチンまで連れていき、聡美さんに預けます。すると、さっきまで泣いていた赤ちゃんがピタリと泣き止んだのです。
それを見てほっとした拓郎さんは、「やっぱりママが良いんだね」と言ってしまいました。
すると、聡美さんの表情が一変。
「そうやって、結局あなたは何もしないわけ?」
さっきまで子どもに優しい顔を向けていた妻が、いきなり怒り出したのです。
拓郎さんは驚きました。
「何もしないってどういうこと?」
「いつだって私に押し付けるじゃない」
「なんだよそれ。仕事を早く切り上げてお風呂に入れたり、面倒見たりしているじゃないか」
「できる範囲で、でしょう?」
「できる範囲でして何がいけないんだよ。こっちは仕事もあるんだから」
「仕事をしてたら子育てはしなくていいの? あなたの子でしょ!」
「そりゃそうだけど、お風呂に入れたって、俺がやると泣き出すから仕方ないだろう」
「泣き止ませるにはどうしたら良いか、少しは考えてよ」
「なんだよ、その言い方!」