インド準備銀行が直面する古典的な問題

投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、マーケットレポート・ヘッドライン。日々のマーケット情報を専門家が分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

インド準備銀行(中央銀行)のダス総裁は景気とインフレ率どちらを優先するかという「古典的」な問題に直面する中、今回はインフレ率上昇の抑制を選択しました。6月の消費者物価指数(CPI)が前年比6.09%とインフレ目標上限(6%)を超えていることが背景で、当面据置も想定されます。ただ、景気回復も緩やかで金融緩和の意向も十分に残していると見ています。

インド準備銀行:市場予想が相半ばする中、当面はインフレ抑制を重視

インド準備銀行(中央銀行、RBI)は2020年8月6日に市場予想に反して、全会一致で政策金利を4.00%に据置くことを発表しました(図表1参照)。

 

市場では過半が0.25%の利下げを予想していましたが、半数近くは据置きを見込んでいました。市場の利下げ期待に反する据置きは昨年12月と同様の結果で、RBIのインフレ重視の姿勢が確認される格好となりました。

どこに注目すべきか:インド準備銀行、市場予想、CPI、PMI、コロナ

インド中銀のダス総裁は景気とインフレ率どちらを優先するかという「古典的」な問題に直面する中、今回はインフレ率上昇の抑制を選択しました。6月の消費者物価指数(CPI)が前年比6.09%とインフレ目標上限(6%)を超えていることが背景で、当面据置も想定されます(図表2参照)。ただ、景気回復も緩やかで金融緩和の意向も十分に残していると見ています。

 

インドのインフレ率が高止まりしています。上昇をけん引している項目のひとつは食品価格、特に野菜類などです。背景はインドは今年天候不順で長雨に見舞われたためです。

 

ルピー安が続いていることも、多くの財を輸入に頼るインドにとって痛手です。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大でルピーは3月頃大幅安となりましたが、その後の回復も相対的に鈍く、潜在的なインフレ懸念材料であり、金融緩和を抑制する要因でもあります。

 

原油やガスなどエネルギー価格は足元緩やかに上昇していますが、インドのインフレ率との相関も低いわけではありません。また、インドの金需要が根強いことから、インフレ率と上昇傾向を維持している金価格と連動する時期もみられます。当面、インドの価格動向には注意が必要と思われます。

 

次にインドの景気動向を見ると、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり厳しい状況です。感染者は累計で200万人に達し、米国、ブラジルに次ぐ規模です。新規感染者数も5万人を超えるなど、収束が見通せない状況です。

 

全国的な経済制限は緩和されましたが、足元一部地域で制限が強化されています。7月の製造業とサービス業購買担当者景気指数(PMI)は頭打ちです(図表2参照)。インド中銀の会見でもダス総裁はモビリティデータが鈍化していることを指摘していますが、確かに8月データを見ても回復は鈍いままで、感染再拡大の影響がうかがえます。

 

このような状況を踏まえ、インド中銀の政策姿勢を振り返ります。インド中銀が成長率やインフレ率予想を明確にしなかったことに迷いが見られますが、目先はインフレ動向に配慮しつつ、効率的な金融緩和政策を模索すると見ています。インド中銀は、融資の規制緩和に一定の効果を期待しているようです。また経済政策としては、財政政策の役割に期待している印象です。あくまで想像で、より詳細な検討は必要ですが、財政政策を前面に出し、金融政策は国債購入で役割を分担する方が効率的か思いを巡らせているのかもしれません。

 

日次、期間:2019年8月6日~2020年8月6日、国債は5年物利回り 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]インド政策金利と国債利回り、ルピー(対ドル)の推移 日次、期間:2019年8月6日~2020年8月6日、国債は5年物利回り
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

月次、期間:2017年8月~2020年7月、PMIは製造業とサービス業 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]インド消費者物価指数(CPI)とPMIの推移 月次、期間:2017年8月~2020年7月、PMIは製造業とサービス業
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インド準備銀行が直面する古典的な問題』を参照)。

 

(2020年8月7日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

投資家ご本人が、自ら考え、選び、投資をするプロセスを徹底サポート!
幻冬舎グループのIFAによる
「資産運用」個別相談会

 

[PR]11月25日(水)WEB&幻冬舎会場開催/特別イベント
新型コロナ・ショックに揺れる世界のマーケットをプロはどう見ているのか?
資産運用のプロから直接「本音」が聞ける!

IFA口座開設済みのお客様限定/特別フリートークセッションライブ

 

 

幻冬舎グループがIFAをはじめました!
「お金がお金を生む仕組み」を作りたいけど、相談相手がいない…
この現実から抜け出すには?

 こちらへ 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・ヘッドライン

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧