本記事は、山田知広税理士の著書『オーナー社長のスゴい引退術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

社長の会社の評価額は「8500万円」

翌日さっそく話を聞きに社長の自宅を訪問しました。80歳を目前にして、やっとやる気になっていただけました。このC社長のように、本人はまだまだ元気で、仕事もやれると思っているケースはよくあります。病気や怪我をしてみて、ようやくハッと気づき、「会社をどうにかしなければ!」と本気になります。

 

この会社のM&Aでの問題点は、前から分かっていました。1つは、会社は無借金なのですが、売上が低迷気味で、新たな販路や商材が必要なことです。もう1つは、ラボ兼工場の土地が、様々な溶剤などを長年使っているため、土壌汚染の問題がある可能性です。一般的に、化学工場などに使用していた土地は有害な化学物質が排水などから地表面に浸透し、土壌に残留している可能性があります。

 

かつて、広い工場用地の有効活用の相談に乗ったことがあり、その際に、建売ハウスメーカーには売却が難しかった経験があったのです。土壌改良費用があまりにかかる土地はそのまま工場として利用していくしか方法はありません。

 

もし会社を清算すると、土地は社長のものになります。すると近い将来、相続で家族が困ってしまうのは目に見えていました。

 

さっそく企業評価を行い、8500万円の評価を弾き出しました。

 

私が代理人となって某M&A情報サイトに物件情報を登録したところ、数週間でオファーが舞い込みました。

 

オファーしてきたDという会社は、北陸にある印刷会社です。これまで印刷用のインクを外注していたのですが、今後は自社開発をしたいとの希望があり、地銀のM&A担当者経由で紹介があったのです。

 

北陸の会社が名古屋の会社を買うのを不思議に思われるかもしれませんが、北陸で業績のよい会社は支社を作るとき、東京に出ていくか、名古屋に出ていくかを検討することが多いのです。

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オーナー社長のスゴい引退術

オーナー社長のスゴい引退術

山田 知広

幻冬舎

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