弁護士に依頼する側の「2つの心得」とは?
任意後見契約を実りあるものにするには、力量のあるいい弁護士を選ぶことが大切ですが、依頼する側にも注意してほしい点が2つあります。
第一に「正直に、ありのままを話す」ということです。依頼者のなかには、自分にとって不利なことを隠し続ける人がいます。弁護士がいくら有能でも、依頼者から得られる情報が正確でなければ、有効な対策の立てようがありません。「こんなことを知ったら驚くのでは?」とか「家の恥だから、このことは秘密にしておこう」といった考えは捨ててください。
弁護士はドラマ顔負けの数々の修羅場を見聞きしているので、ちょっとやそっとでは驚きません。「出せる情報は全部出す」つもりで、正直に話してください。
第二に、「自分の考えに固執するのもやめる」ことを心がけてください。依頼者のなかには、何を言っても耳を貸してくれない人がいます。これは非常にもったいないことです。
専門家のアドバイスが欲しくて弁護士を訪ねてきているのに、そのアドバイスを頑固にはねつけるのでは、意味がありません。弁護士活用の効果を最大限にするために、まずは自分の考えは横に置いて、弁護士の言うことに耳を傾け、その内容を咀嚼してほしいと思います。
弁護士は誰でも、できる限り依頼者の望むことを実現したいと考えています。しかし、依頼者が自分の考えに固執し、その内容が依頼者自身の不利になるようであれば、弁護士としては見過ごすことができません。弁護士には依頼者の利益を守る義務があります。
その意味では、決して譲れない部分があるということを、理解してほしいと思います。「必要なことは、正直に全て打ち明ける」「弁護士の意見を聞き、その内容をよく咀嚼する」この2点を守ることができれば、弁護士といい関係を築くことができるでしょう。
子どもに契約締結を報告するか否かは「親子関係」次第
任意後見契約を締結するまでに、弁護士は依頼人に入出金が記帳された預金通帳も含め、株式や有価証券、登記簿謄本など、財産関係の書類を全て見せてもらい、財産の一覧を作ります。多くの場合、契約まで3回ほど弁護士と面談することになるでしょう。
子どもに任意後見契約をすることを告げるか告げないかは、依頼人に個別に判断してもらいます。弁護士から「お子さんの了承を得てください」と言うことはありません。
先ほども触れたように、親と子は、相続財産という観点からすると、利益相反の関係になります。場合によっては、弁護士と任意後見契約を結ぶことで、親子関係がギクシャクすることもあり得ます。
「お父さんとお母さんにも、自分たちの人生がある。私たちはこんなふうに、残りの人生を生きていきたいと考えている。あなたたちにはこれだけ残すから、了解してほしい」と、子どもたちに告げることが望ましいですが、それも親子関係次第でしょう。