安定したリターンを得ながらリスク分散ができる「私募リート」。今回は、私募リートにおける投資法人の資金調達手段について見ていきます。

資金調達手段は「エクイティ」と「デット」の2つ

私募リートにおける投資法人の資金調達手段としては、「エクイティ」と「デット」という2つの選択肢があります。貸借対照表上、エクイティは「資本」を、デットは「負債」を構成することになります。

 

まず、エクイティは「投資口」の形で、投資家から調達されます。「投資口」とは、均等の割合的単位に細分化された投資法人の社員としての地位で、株式会社における「株式」に相当するものです(「株券」に該当するものとして「投資証券」が発行されます)。

 

譲渡の自由が認められているなど投資口と株式との間には共通点もありますが、以下のように相違点も少なくありません。

 

【「投資口」と「株式」の相違点】

●投資口は常に無額面で発行される

●現物出資による払込みが認められていない

●種類投資口の発行が認められていない

●投資口の有利発行が禁じられている

 

このように株式に比べると投資口には発行に関して様々な制限が課されているため、資金調達の多様性という点においては、投資法人の方が株式会社に比べて選択肢が狭くなっているとの評価もあります。なお、投資口をもつ投資主に対しては、投信法の規定などに基づいて以下のような権利が認められています。

 

【投資主の主な権利】

①投資口を処分する権利
②投資証券の交付を請求する権利
③分配金を請求する権利
④残余財産の分配を請求する権利
⑤投資主総会で議決権を行使する権利
⑥代表訴訟を提起する権利
⑦違法行為の差止めを請求する権利
⑧役員の解任を請求する権利
⑨帳簿等の閲覧を請求する権利

デットは金融機関からの借入れによる資金調達

一方、デットについては、借入れの形で金融機関等から調達することになります。投資法人は、利益のほとんどを投資家に対して配当するため、結果的に内部留保金をほとんどもたないことになります。そのため、借入れによって機動的な資金調達を行うことが必要となります。

 

投信法では、借入限度額など一定の事項をリートの規約に記載することが義務付けられていますが、借入れを行うこと自体は制限されていません。具体的な借入れの手段としては、一般に「ノンリコースローン」が活用されています。

 

ノンリコースローンとは、賃貸収入や物件の売却代金など特定の不動産事業から発生するキャッシュフローのみを返済原資とする融資のことです。原則として融資対象となる不動産物件のみが債務の引き当てとなり、物件を手放せば返済義務を免れることになります。このように、ノンリコースローンは通常の事業ローンに比べて、借入れ側の弁済リスクが限定される仕組みになっているのです。

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