「何もしなければ1億円以上の相続税」だったけど…
■1億円の相続税が約半分まで減少
贈与は5人それぞれに毎年200万円ずつの合計1000万円で行うことにしました。基礎控除を抜いて計算すると、1人当たり毎年9万円の贈与税がかかります。5人で合計しても45万円の課税です。1人に対して1年で1000万円の贈与をすれば177万円が課せられるので、5人に分割して贈与することで毎年132万円も節税できていることになります。
Kさんが所有していた現預金は当時で1億5000万円ほどあったので、もっと短期間で高額な贈与をするという方法も考えました。しかしKさんの今後の生活費や地代収入についても様子を見なければなりませんでしたから、毎年1000万円ずつの贈与で抑えました。1000万円を5人で分ければ税率はそれぞれ最低の10%ですし、Kさんが長生きすればするほど節税対策になるという点を重視した結果です。
長生きすればするほど節税対策になる事実は、被相続人にとって少なからず、頑張って長生きしなきゃいけないなという励みになることもあります。結果、Kさんはそれから14年後、95歳で自宅での大往生を迎えました。14年間で、合計1億4000万円を贈与できたことになります。しかも贈与税はたったの630万円、税率で換算すると4.5%です。
1億4000万円の現金贈与に加えて、Kさんが旅行等で現金を減らしていたこともあって、相続時の全体の財産評価額は2億円を下回ることになりました。それによって税額の計算時にもともと40%の税率での計算になっていたところを30%まで下げることができたのです。
その結果、相続税は4500万円程度になり、贈与税と合わせても5000万円を少し超えるくらいで済みました。何もしなければ1億円以上の相続税を支払うことになっていたことを考えると、約半分まで減少できたことになります。
相続発生後に財産を受け取っても、既に年も年で使いにくいということは往々にしてありますが、生前のうちに贈与することで贈与された側にとっては、生活費や教育費など有益な使い道をいろいろと考えられるものです。
また、Kさんは生前に贈与することで息子夫婦と孫3人に感謝の言葉をもらうことができて、家族の絆が深まったと大変喜んでおられました。贈与は節税だけでなく、家族の絆を深める、家族のコミュニケーションを増やす力があることを改めて教えてくれた案件でもありました。
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