本格的な海外口座活用の場として、やはり真っ先に名前が挙がるのが「香港」。本連載では、4月5日に刊行された『グローバル資産防衛のための「香港銀行口座」活用ガイド』の中から先行して一部を抜粋し、香港で一番「使いやすい」銀行の見極め方をご紹介します。今回は海外送金にかかるコストについて見ていきます。

金融機関によって異なる海外送金の手数料や限度額

国内での振り込みの場合も他行へ振り込むときには手数料がかかりますが、海外送金ではより多くの手数料がかかります。料金は金融機関などによって様々です。手数料の種類と一般的な金額について把握しておきましょう。


《送金手数料》
送金手数料は、文字通り海外に送金する際に銀行に支払う手数料です。料金は金融機関によって異なりますが、たとえば三菱東京UFJ銀行の場合は次のようになります。


● インターネットバンキング(当行本支店、現地法人名宛て)……3,000円
● インターネットバンキング(他行宛て)……3,500円
● 窓口(当行本支店・現地法人宛て、口座引落)……4,000円
● 窓口(当行本支店・現地法人宛て、現金扱い)……5,000円
● 窓口(他行宛て、口座引落)……4,500円
● 窓口(他行宛て、現金扱い)……5,500円

 

 

数百円程度で済む振込手数料と比べると、だいぶ高いことが分かります。ちなみに、りそな銀行の場合は電信送金で6,000円、送金小切手の場合は1万円です。また、新生銀行では総合口座「パワーフレックス口座」を持っている人を対象にした送金手数料で4,000円となっています。


基本的にインターネットやモバイルバンキングを利用したほうが送金手数料は割安です。楽天銀行の海外送金手数料は1件当たり750円、セブン銀行の場合は送金額によって990~6,500円です。窓口を利用した送金よりは総じて手数料が安いことが分かります
が、銀行によって中国やフィリピンには格安の料金で送金ができても、香港への送金では
料金が異なるなど、様々な制限もあります。


最も大きな制限は、送金金額の限度額です。たとえば、楽天銀行の「個人向け海外送金」の場合は、1回で送金できるのは100万円までとなっています。1日の送金限度額も同じく100万円です。また、1カ月(1日から月末まで)当たりの限度額は200万円、年間(1月1日~12月31日)で500万円と決められています。これでは、NWBの最低預入金額である10万ドル(約1100万円)を送るのに、2年以上もかかってしまいます。手数料が安い分、大きな金額を一度に送れないというデメリットがあるわけです。逆に金融機関の窓口は手数料が比較的高いものの、高額な海外送金も可能になっています。

送金先銀行の手数料やリフティングチャージにも注意

《為替手数料》
為替手数料は、通貨を変換する際に銀行に支払う手数料です。円から米ドル、米ドルから円などと両替する場合、1ドル当たり1円程度の手数料が設定されています。1円と聞くと全く気にならないかもしれませんが、それなりの金額を両替すると、手数料も馬鹿になりません。たとえば100万円を米ドルに替えて送金しようとする場合、1ドル100円だとしたら両替後は為替手数料を考えなければ1万米ドル。ただし、1万円の為替手数料が取られることになります。100万円送金したはずが9900ドルになってしまうわけですから、確実に資産は目減りしています。

 

為替手数料は、為替市場の動きなどによって、銀行が「仲値」と呼ばれる基準レートを日々、刻々と決めていますが、顧客にはこの仲値を基準として「TTS(対顧客電信売)」と「TTB(対顧客電信買)」が提示されます。たとえば、米ドルの場合は、TTSが「仲値プラス1円」、TTBは「仲値マイナス1円」です。


このプラスマイナス1円が為替手数料になります。為替手数料は、為替市場の動向によって変わるため、海外に送金するときは円高、海外から送金してもらうときは円安のタイミングにすると、為替差益が出ることもあります。


《送金先銀行の手数料》
海外送金で忘れてはならないのは、送金元の金融機関に払う手数料の他に、受け取る先の金融機関でも手数料が発生する場合があることです。金額は金融機関によって様々ですが、10~30米ドル前後が一般的なようです。支払いについては、後日、海外送金した先の金融機関から「海外中継銀行手数料」として請求される場合と、送金金額から手数料が差し引かれる場合があります。送金人負担にしてしまい、最初からその手数料を加算して送ればいいわけですが、金融機関によっては「送金人負担」を断られるケースもあります。送金金額から差し引くと、送りたい金額に足りなくなってしまう場合もあるので注意が必要です。


《リフティングチャージ》

送金に際して通貨を両替すると為替手数料がかかります。では、両替しないで送金すると、手数料を節約できるのでしょうか。確かに為替手数料はかかりませんが、その代わり別な手数料がかかります。それがリフティングチャージです。たとえば円を円のまま送金する場合や、米ドルを米ドルのまま送金する場合に、リフティングチャージが発生します。リフティングチャージの額は金融機関によってまちまちです。メガバンクの場合は「送金金額の0.05%(最低2,500円)」が一般的ですが、新生銀行では「送金額の0.1%(最低1,500円)」となっています。

 

《その他、変更手数料など》
海外送金に際して、その他には後日、次のような手数料がかかることもあります。送金したものの受け取る側の銀行口座が見つからない、あるいは口座はあったけれども受け取る際にトラブルがあった、などという場合です。たとえば、三菱東京UFJ銀行の場合は、次のような料金がかかります。


● 送金組戻手数料(送金を中止して自分の口座に戻す手続き)……4,000円

● 送金内容変更手数料(送金先の名義人などを途中で変更する手続き)……4,000円

 

 

数千円とはいえ余分な手数料を取られないよう、送金の際には十分に準備をして、間違
いなく手続きを行うことが大切です。

本連載は、2016年4月5日刊行の書籍『グローバル資産防衛のための「香港銀行口座」活用ガイド』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載の記載の内容は情報の提供および学習を目的としたものであり、本連載を用いた運用は、必ずご自身の責任と判断によって行ってください。また、本連載の内容に関して運用した結果については、著者および株式会社幻冬舎メディアコンサルティング、合同会社幻冬舎ゴールドオンラインはいかなる責任も負いかねます。また、本書に記載されている情報は2016年4月現在のものであり、今後変更されることがあります。

グローバル資産防衛のための 「香港銀行口座」活用ガイド

グローバル資産防衛のための 「香港銀行口座」活用ガイド

岩崎 博充

幻冬舎メディアコンサルティング

世界有数の金融センター香港の魅力から、現地金融機関の特徴、日本人に最適な銀行での具体的な口座開設手順、さらには購入可能な金融商品と運用のポイントまで海外銀行口座の活用方法を徹底ガイド!

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