●世界各国でワクチンの開発が急ピッチで進行中、すでに第3相試験まで進んだ研究グループもある。
●英オックスフォード大学と英アストラゼネカ社による研究が早く進み、ワクチンは9月に供給開始予定。
●ワクチン開発の予測は困難だが、臨床試験が段階的に進む限り、株価の下支え要因になるとみる。
世界各国でワクチンの開発が急ピッチで進行中、すでに第3相試験まで進んだ研究グループもある
足元の金融市場では、新型コロナウイルスのワクチン開発を巡る報道に、敏感な反応がみられるようになりました。そこで今回のレポートでは、国内外のワクチン開発動向をまとめます。なお、ワクチンの開発について、深く理解するには専門的な知識が必要となるため、ここでは厚生労働省や世界保健機関(WHO)などが公表するデータに基づき、株式相場を見通すうえでの材料を整理するにとどめます。
ワクチン開発の主なプロセスをまとめたものが図表1で、基礎研究、非臨床試験、臨床試験を経て、承認審査、販売・流通という流れになります。臨床試験には、第1相試験、第2相試験、第3相試験の3段階があり、段階が進むにつれ、試験の規模は大きくなります。現在、世界各国で新型コロナウイルスのワクチン開発が急ピッチで進められており、すでに第3相試験まで進んだ研究グループもあります。
英オックスフォード大学と英アストラゼネカ社による研究が早く進み、ワクチンは9月に供給開始予定
WHOの参考資料によれば、7月20日時点で臨床試験入りしている主な新型コロナウイルスのワクチンは、図表2の通りです。これによると、英オックスフォード大学と英アストラゼネカ社のワクチン、中国シノバック社のワクチンが、第3相試験入りしており、また、米モデルナ社と米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のワクチンも、7月27日に第3相試験に入る予定となっています。
なお、英アストラゼネカ社は7月20日、初期の臨床試験(第1/2相試験)で強い免疫反応を確認したと発表しました。臨床試験は現在、英国やブラジルなどで行われていますが、日本でも8月の臨床試験実施に向けて調整が進んでいます。報道によれば、ワクチンは9月にも供給が始まる予定で、主要研究グループのなかでは、最も早く開発プロセスを進めています。
ワクチン開発の予測は困難だが、臨床試験が段階的に進む限り、株価の下支え要因になるとみる
一方、日本では、日本医療研究開発機構(AMED)が国内のワクチン開発を支援しています。具対的には、①組み換えタンパクワクチン(国立感染症研究所/UMNファーマ/塩野義製薬)、②mRNAワクチン(東京大学医科学研究所/第一三共)、③DNAワクチン(大阪大学/アンジェス/タカラバイオ)、④不活化ワクチン(KMバイオロジクス/東京大学医科学研究所/国立感染症研究所/医薬基盤研究所)などです。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に、収束の兆しがみられないなか、足元の株式市場が比較的底堅く推移しているのは、各国の経済対策や金融緩和に加え、ワクチン開発への期待も、一定程度影響していると考えています。一般に、ワクチンなど医薬品の開発は、予測が難しいとされますが、主要研究グループによる臨床試験が段階的に進む限りは、株価の下支え要因になると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型コロナウイルスのワクチン開発動向』を参照)。
(2020年7月22日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト