●日経平均をTOPIXで割ったNT倍率はコロナ・ショックで急落後、足元まで上昇基調が続いている。
●日経平均は、半導体製造装置や電子部品などの値がさ株の上昇によって、大きく押し上げられた。
●TOPIXは時価総額上位銘柄が低調、米ハイテク選好の動きもあり、NT倍率は上昇基調継続か。
日経平均をTOPIXで割ったNT倍率はコロナ・ショックで急落後、足元まで上昇基調が続いている
NT倍率とは、日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割った指標です。NTは両者の頭文字(日経平均株価のNとTOPIXのT)であり、この指標を用いることで、2つの株価指数の相対的な強さを判断することができます。例えば、日経平均株価の騰勢がTOPIXを上回ればNT倍率は上昇し、反対にTOPIXの騰勢が日経平均株価を上回れば、NT倍率は低下します。
NT倍率について、2019年からの推移をみたものが図表1です。コロナ・ショックにより、NT倍率は2020年3月下旬に急落しましたが、その後は上昇基調に転じました。一般に、日経平均株価は株価水準の高い銘柄(値がさ株)の値動きに、より影響を受けやすく、TOPIXは時価総額の大きい銘柄(大型株)の値動きに、より影響を受けやすい傾向があります。この特徴を踏まえ、NT倍率上昇の背景を探ります。
日経平均は、半導体製造装置や電子部品などの値がさ株の上昇によって、大きく押し上げられた
まず、日経平均株価の動きを確認すると、2020年3月19日につけた年初来安値(終値ベース、以下同じ)から7月20日までの期間において、上昇率は37.2%、上昇幅は6,164円65銭でした。日経平均株価を構成する225銘柄のうち、上昇幅に対する寄与度が大きい上位10銘柄は図表2の通りです。このわずか10銘柄で、日経平均株価の上昇幅の半分強(52.6%)を占めていることになります。
10銘柄をみると、ファーストリテイリング、東京エレクトロン、ファナックなど、ほとんどが値がさ株です。つまり、少数の値がさ株が、日経平均株価の動きに大きな影響を与えていることが分かります。また、これらの業種には、デジタルトランスフォーメーション(ITによるビジネスや生活の質向上)の進展の恩恵を受けやすい、半導体製造装置や電子部品が含まれています。
TOPIXは時価総額上位銘柄が低調、米ハイテク選好の動きもあり、NT倍率は上昇基調継続か
次に、TOPIXの動きをみると、前述の期間における上昇率は22.9%でした。TOPIXを構成する時価総額上位10銘柄(3月19日時点)と、それぞれの上昇率は図表2の通りです。日経平均株価の上昇率37.2%を上回ったのは、10銘柄のうち3銘柄にとどまり、自動車(トヨタ自動車)や銀行(三菱UFJフィナンシャル・グループ)が出遅れるなど、これらがTOPIXのパフォーマンスの重しとなりました。
一方、米国では、主要株価指数のなかで、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数や、主な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の上昇が顕著です。つまり、米国でも、デジタルトランスフォーメーションの進展が追い風となる業種や銘柄が選考されており、これは日本の関連銘柄にも好材料です。すでに上昇基調にあるNT倍率ですが、今後も相対的に高水準での推移が続く公算が大きいと予想されます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『NT倍率上昇の背景』を参照)。
(2020年7月21日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト