年初からの日本株の投資部門別売買状況

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●海外投資家は年初から日本株を大幅に売り越しており、日本株投資に慎重な姿勢がうかがえる。

●個人は逆張り、事業法人は自社株買い、信託銀行は年金のリバランスなどから、買い越し傾向に。

●海外投資家の売り越し額は先物を含め7兆円超、売り圧力を吸収しているのが日銀のETF購入。

海外投資家は年初から日本株を大幅に売り越しており、日本株投資に慎重な姿勢がうかがえる

今回のレポートでは、年初からの日本株の売買状況について、投資部門別の動きを検証します。コロナ・ショックで相場が荒れるなか、各投資主体がどのように行動したかを確認することは、今後の日本株を展望する上で重要と考えます。なお、データは、東京証券取引所が毎週第4営業日に公表している投資部門別売買状況のうち、東京・名古屋2市場、1部、2部と新興企業向け市場の合計売買代金(現物)を用います。

 

対象の投資部門は、海外投資家、個人、投資信託、事業法人、信託銀行の5部門です。2020年1月3日を基準に、毎週の売買代金(差額)を累計し、足元までの推移を投資部門別に示したものが図表1です。はじめに、海外投資家の動きをみると、大幅な売り越しとなっていることが分かります。ここには、中長期的な視点で運用を行う海外の年金などが含まれますが、日本株投資に慎重な姿勢がうかがえます。

個人は逆張り、事業法人は自社株買い、信託銀行は年金のリバランスなどから、買い越し傾向に

次に、個人および投資信託の動きを確認します。個人は一般に、相場の下落局面で買い、上昇局面で売るという、いわゆる「逆張り」の手法を好むとされます。今回も、コロナ・ショックで株価が大きく下落した2月下旬から3月下旬にかけて、日本株を買い越す動きがみられました。一方、投資信託も個人投資家を含みますが、現物株を積極的に取引する個人とは異なり、リスク回避姿勢が強いため、年初から売り越し傾向にあります。

 

個人と同様、年初から買い越し傾向が続いているのが事業法人です。事業法人による現物買いは自社株買いと推測され、今年の相場を一定程度下支える要因になっています。そして、国内の年金の動きが反映される信託銀行は、年初売り越しが目立ちましたが、3月下旬から4月上旬にかけて、大きく買い越しに転じました。これは、期末・期初の年金ポートフォリオのリバランスによるものと考えられます。

海外投資家の売り越し額は先物を含め7兆円超、売り圧力を吸収しているのが日銀のETF購入

以上より、年初からの現物取引については、海外投資家の売り越し(累計で約4.5兆円)と、国内投資家の買い越し(個人、事業法人、信託銀行の累計合算で約4.7兆円)、という構図が確認できます。なお、先物取引に目を向けると、海外投資家は年初から足元まで、累計約2.8兆円を売り越しています(図表2)。海外投資家の先物売りは、裁定業社(証券会社など)の裁定取引を通じ、現物の売り要因となります。

 

海外投資家による現物と先物の売り越し累計額を単純合計すると、約7.3兆円に達し、前述の国内投資家による買い越し累計額の約4.7兆円を大きく上回ります。この売り圧力を吸収しているのが、日銀のETF購入で、年初からの累計購入額は約5.1兆円にのぼります。日銀に相場を押し上げる意図はありませんが、買い越し額は突出しており、日本株の安定に大きく貢献しているのは確かだと思われます。

 

(注)データは2020年1月3日を基準に、2020年1月第1週(1月6日~10日)から7月第2週(7月6日~10日)までの累計。現物は2市場(東証・名証)1・2部等の売買状況。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]投資部門別の日本株売買状況(現物) (注)データは2020年1月3日を基準に、2020年1月第1週(1月6日~10日)から7月第2週(7月6日~10日)までの累計。現物は2市場(東証・名証)1・2部等の売買状況。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)データは2020年1月3日を基準に、2020年1月第1週(1月6日~10日)から7月第2週(7月6日~10日)までの累計。先物は日経225先物とTOPIX先物の売買状況。 (出所)大阪取引所、Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]海外投資家の先物売買と日銀のETF購入 (注)データは2020年1月3日を基準に、2020年1月第1週(1月6日~10日)から7月第2週(7月6日~10日)までの累計。先物は日経225先物とTOPIX先物の売買状況。
(出所)大阪取引所、Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『年初からの日本株の投資部門別売買状況』を参照)。

 

(2020年7月20日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

【ご注意】
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