「損をするのは必然」父の資金はついに底をつき…
株式市場が上昇しても下落しても損を出し続け、ついに2010年には資金が底をつく事態に。退職金として得た2億円は、父の間違った投資方法によって、丸ごと市場へ吸い取られてしまったのです。
父の逆張りの投資手法は、儲かることもそれなりにありましたが、長期的な目線で見ると必ず損を出していました。空売り(価格が下がる局面でも利益が出せる取引手法)をしても損を抱えているのです。相場に左右されず損をするのですから、ある意味すごい話です。なぜ父は常に損をし続けていたのか。
それは、少額でも利益が出せたものはすぐに売却し、損が出ているものは売却せずそのまま放置していたからです。利益確定で一歩進む一方で、含み損がどんどん膨れて三歩も四歩も後退していることが問題でした。
そして、その現実を真正面から受け止めない父の取り組み方が、一番の問題だったのです。
父の考え出した投資手法では、本来であれば購入時よりも株価が下がってしまった銘柄は損覚悟で売る(これを損切りといいます)べきなのです。しかしそのタイミングをいつも逸してしまい、含み損を抱えたままにし、なかには倒産に至ったものもありました。これでは絶対に儲かるはずがありません。
それはまるでもぐらたたきのようなもので、上がってきたら売って、上がってこないで下がっていく一方のものは放置という状態です。
長年投資の世界に身を置いて、そして父の投資を外側から見てきて、はっきりしていること。父は、投資に対する考え方がまず間違っていたのです。損をするのは必然でした。
■「根拠のない思考」は捨てる
人の当然の心理として「損をしたくない」という強い執着があります。「上がったものはいつか下がるだろう」という消極的思考からすぐに利益を確定する。そして「下がったものはいつか上がるだろう」という希望的観測から、損切りせずにそのまま保有する。このような思考が定着している人は、投資で成功することはまず考えられません。