病気を未然に防ぐ「栄養学」と「食品機能学」に加え、老化についても最前線の研究成果を紹介する。知らず知らずのうちにストレスをため込んでいませんか。健康的な生活を送るために役立つ「食事の知恵」や「医学の意外な常識」を明らかにします。本連載は東海大学農学部バイオサイエンス学科の永井竜児教授の『間違いだらけの栄養学』(辰巳出版)から一部を抜粋し、読んで効く「読むくすり」をお届けします。
3大合併症はすべて血管の老化がともなう
糖尿病を患うことは、いろんな病気の根元にもなります。そこから派生していろんな病気になり、免疫力も落ちます。それが合併症です。
糖尿病でよくいわれる3大合併症は、神経症、腎症、網膜症です。糖尿病がひどくなったら「足のケガに気をつけてください」とよくいわれますが、血糖値が上がることで血管が傷み、毛細血管の血行が悪くなることで細胞のすみずみまで血液が巡らず、再生力が弱まることで免疫力が下がり、神経がやられてしまうのです。
たとえば、軽い足の傷はふつう消毒するか洗ったあとバンソウコウを貼って処置します。ふつうの人ならそれで皮膚細胞が再生して傷口は治ります。いっぽう、糖尿病が進むと神経伝達が悪くなって痛みを感じず、傷口を放っておいてしまい、しかも免疫力が落ちているから、なかなか治らずどんどん膿んできます。痛くもかゆくもないから、気づいたころには、足が腐ってしまう。壊疽で足の切断という、最悪な事態も起こりえます。糖尿病は神経の病気ともいえるのです。
腎症は、いらないものをろ過する腎臓が悪くなることで、むくみや息切れが起こり、症状が進むと手足のしびれや筋肉の硬直が起きてきます。
網膜症は目の奥にありスクリーンの役割を果たす網膜の毛細血管が切れて出血し、最悪の場合は失明してしまう症状です。
この3大合併症は、すべて血管の老化をともなって起こるのです。
東海大学農学部
教授
1999年(平成11)3月熊本大学大学院医学研究科修了・博士(医学)。専門分野は、食品機能学、生化学。サウスカロライナ大学客員 助手を経て、熊本大学大学院医学薬学研究部病態生化学講 座・助教。東海大学農学部バイオサイエンス学科食品生体調 節学研究室准教授を経て、2017年4月同教授。生体のさ まざまな代謝経路から生成する終末糖化産物(AGEs)を測定し、糖尿病合併症のマーカーへの応用性を検討している。また AGEs抑制をはじめ、糖尿病合併症のようにかかってからでは完治が困難な疾患を予防する食品成分を探索している。日本メイラード学会、国際メイラード学会、日本抗加齢医学会、日本酸化ストレス学会等の評議員を務める。テレビ朝日系『林修の今でしょ! 講座』、テレビ東京系『主治医が見つかる診療所』等にも出演。トマトの栄養素「リコピン」「エスクレオサイドA」に関して講義をし、トマトのパワーが大きな話題に。近著に『間違いだらけの栄養学』(辰巳出版)がある。
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