糖尿病になると人間の体は「ナメクジに砂糖」のメカニズム

病気を未然に防ぐ「栄養学」と「食品機能学」に加え、老化についても最前線の研究成果を紹介する。知らず知らずのうちにストレスをため込んでいませんか。健康的な生活を送るために役立つ「食事の知恵」や「医学の意外な常識」を明らかにします。本連載は東海大学農学部バイオサイエンス学科の永井竜児教授の『間違いだらけの栄養学』(辰巳出版)から一部を抜粋し、読んで効く「読むくすり」をお届けします。

塩分も糖分も水分を引きよせる

みなさんは、ナメクジに塩をかけると縮んでしまうことはよくご存じでしょう。しかし、砂糖をかけてもナメクジが縮んでしまうことを知っていますか?

 

高血糖のとき、人のカラダの中では、ナメクジと同じ現象が起きています。人がナメクジと一緒だとは、ぎょっとする話ですが、そのカラクリをみてみましょう。

 

食事を摂(と)ることで血液内の血糖値は上がり、通常、すい臓のβ(ベーター)細胞がその状態にすばやく反応して、インスリンを分泌します。インスリンは血糖値を一定の状態に保つように作用し、それから、肝臓や筋肉へ、貯蔵のためにブドウ糖からグリコーゲンを、脂肪組織ではブドウ糖を中性脂肪に変えて、エネルギー源として蓄えます。

 

砂糖をかけてもナメクジは縮んでしまう。
砂糖をかけてもナメクジは縮んでしまう。

 

食事を過剰に摂ると高血糖になり、カラダは絶えずインスリンを出している状態になります。しかしやがて、β細胞がインスリンを出せなくなり、インスリンの血中濃度が最初は高くなっても、その後はβ細胞が疲れて分泌しなくなり、血中濃度は下がってしまいます。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンで、カラダにとってなくてはならない分泌物です。インスリンが出ないと血糖値は当然高くなってしまいます。

 

そこで、ナメクジに〝砂糖〟の問題です。糖分や塩分は、浸透圧の作用によって水分を引き込んでしまう性質があります。だからナメクジに塩や砂糖をかけると、塩や砂糖がナメクジのカラダの中にある水分を吸い出して、ナメクジ自身は乾いて縮んでしまうわけです。食品を防腐することを考えると真っ先に、食塩による「脱水」を利用した「塩漬け」が思いつきますが、糖にも同様の作用があります。ジャムが腐りにくいのは糖分が40%以上含まれており、浸透圧の作用で細菌が脱水されて繁殖できないからです。

 

人のカラダも、血中の糖分が高くなると、浸透圧の作用で、カラダの水分を血管の中にどんどん引き込んでしまいます。その後、引き込まれた水分は尿として排出され、糖尿病の症状として、多尿が起きます。さらにカラダは水分不足になるので、ノドが渇いて、皮膚が乾燥します。

東海大学農学部 教授

1999年(平成11)3月熊本大学大学院医学研究科修了・博士(医学)。専門分野は、食品機能学、生化学。サウスカロライナ大学客員 助手を経て、熊本大学大学院医学薬学研究部病態生化学講 座・助教。東海大学農学部バイオサイエンス学科食品生体調 節学研究室准教授を経て、2017年4月同教授。生体のさ まざまな代謝経路から生成する終末糖化産物(AGEs)を測定し、糖尿病合併症のマーカーへの応用性を検討している。また AGEs抑制をはじめ、糖尿病合併症のようにかかってからでは完治が困難な疾患を予防する食品成分を探索している。日本メイラード学会、国際メイラード学会、日本抗加齢医学会、日本酸化ストレス学会等の評議員を務める。テレビ朝日系『林修の今でしょ! 講座』、テレビ東京系『主治医が見つかる診療所』等にも出演。トマトの栄養素「リコピン」「エスクレオサイドA」に関して講義をし、トマトのパワーが大きな話題に。近著に『間違いだらけの栄養学』(辰巳出版)がある。

著者紹介

連載健康長寿になる「食べ物」と「食べ方」の最新常識!

間違いだらけの栄養学

間違いだらけの栄養学

永井 竜児

辰巳出版

病気を未然に防ぐための栄養学と食品の機能に加え、老化についての最前線の研究成果をもとにしながら、日々の健康的な生活に役立つ食事の知恵や、栄養学と医学の意外な常識を明らかにする。 本書に書かれている健康づくりの…

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