人工透析は1人あたり年間500万円以上かかる
世の中は生活習慣病に満ち溢れています。糖尿病が進行し悪化すると、最終的には人工透析を受けるようになります。週に2~3回、1回に3時間くらいベッドに横になって、機器を使って人工的に血液を浄化する処置を受けなければなりません。現在、人工透析が必要となる原因の1番は糖尿病です。糖尿病の合併症として腎症になってしまうからです。
糖尿病性腎症になり、いったん症状が進むと、人工透析をするか移植手術をしない限り腎機能を維持することはなかなかできません。早期に発見されたならば栄養指導によって進行を遅らせる程度のことはできますが、明らかに腎機能が下がった場合には、きれいに元どおりにすることは難しいでしょう。感染症や急性的な要因で腎機能が下がったのなら別ですが、じりじりと腎機能が下がってしまった場合は、これだけ医学が進んでも進行を抑えることはできないのです。
さらに問題は、それにかかる莫大な医療費です。人工透析は医療費が1年間に1人あたり500万円以上かかりますが、日本の経済成長はいき詰っているとはいえ、国民皆保険制度があるので賄えています。しかし、発展途上国で腎臓が悪くて透析が必要になると、富裕層でない限り治療を受けられず、人工透析が必要な病状は、すなわち死を意味します。先進国でも、アメリカのように国民皆保険制度がうまく機能してない国では、低所得者が人工透析を長くつづけることは難しいでしょう。
僕が子どもだったころ、社会人は保険が1割負担でしたが、博士号を取り大学教員として社会人になって保険資格を得たその年から3割負担になりました。この大きな要因は、生活習慣病による医療費増大があげられます。日本で人工透析にかかわる費用は総額1兆6000億円ともいわれ、総医療費の4%を占めます。
国の医療費の余力がなくなり、1割負担では維持できなくなってしまったので3割負担になった要因の1つが、「糖尿病」といっても良いでしょう。中国でも人工透析になると国の保険制度ではお金を払いきれないため、腎症の悪化は、死を意味します。
医療が進むいまでも腎症を劇的に良くする薬は現われず、血圧を下げる薬で徹底的に血圧をコントロールしてあげると腎機能の悪化を緩慢にできるものの、発症してしまった腎症を積極的に回復させることはできません。