人生100年時代…。社会現象となった「熟年離婚」は、生活や金銭のストレスだけでなく、寿命でさえも左右してしまいます。夫婦円満の秘訣を学び、熟年離婚の危機に備えましょう。今回は、性差医療専門医・清水一郎氏の著書『ストップthe熟年離婚』から一部を抜粋し、健康にも影響を及ぼす「孤独」について解説します。

日本人は、「孤独」に憧れ、賛美する人が多い

日本男性が世界一孤独だと指摘されても、意外と驚きはないかもしれません。「沈黙は金」や「武士は食わねど高楊枝(たかようじ)」、はたまた三船敏郎さんのCMキャッチコピー「男は黙ってサッポロビール」などに代表されるような、「孤高」に憧れ、賛美する文化が脈々と受け継がれているからです。

 

「友人がいない」ことや「人付き合いがない」状態の孤独は、人間関係の煩わしさから離れ、自らと向き合う長い時間の中で、安心と不安を繰り返して、独り身でも前向きに生活できる術を体得できるかもしれません。しかし一方で、世の中には、人と接する機会もなく社会的に孤立している人もいます。

 

三世代世帯が激減したことで、核家族化が地縁・血縁を崩壊させています。「困ったときは、お互いさま」や「持ちつ持たれつ」の相互扶助の慣習そのものがなくなっているのです。追い打ちをかけるように、未婚化、晩婚化や少子高齢化で、単身世帯が増え続けています。さらに、労働者の非正規雇用割合が40パーセント近くまで増えてきたことで、職場内での共同体意識そのものが希薄化しています。家族・親戚、地域社会や職場内でも、相互に助け合う関係性が損なわれ、孤立した人が増えているのです。

「孤独」は、健康障害を引き起こす可能性がある

問題なのは、孤独という状態が、相当な健康障害を引き起こす可能性があることです。

 

孤独とは、客観的にみると社会集団のなかで周囲から隔離された状態に近く、一般には心身にストレスが生じる状況です。自律神経の交感神経と副交感神経のバランスを崩し、ストレスホルモンなどが上昇、免疫作用を低下させてしまいます。イライラ、不眠、便秘、冷え、血圧の上昇などの症状の悪化を招くのです。最近の研究では、孤独が運動不足、飲み過ぎや喫煙よりも健康障害リスクが同等以上ということも分かってきました。

 

ここ数年の間に、世界中で孤独と健康被害に関するニュースが相次いで報道されました。まず、2014年の米国学会で発表されたのは、孤独が早期死亡を50パーセント増加させ、孤独による早死が肥満の2倍に相当するリスクがあることです(カシオッポ J、アメリカ科学振興協会)。

 

さらに2017年には、これまで発表された世界中の無数の論文を解析した結果、孤独による死亡リスクは、

●アルコール依存症と同等

●毎日15本の喫煙と同等

●運動不足よりも大きい

 

と判明しました。さらに先の2014年に発表されていた「肥満の2倍のリスク」も改めて評価され、報告されたのでした(ホルトランスタッド J、アメリカ心理学会)。孤独は、アルコール依存症だけでなく、高血圧、糖尿病、心臓病や肺の病気などの生活習慣病に匹敵するか、またはそれ以上の高いリスクで健康障害を引き起こすことになります。

 

同じ2017年、今度は米国の前公衆衛生局長官が「中年男性がいま直面する最大の脅威は喫煙や肥満ではなく、孤独だ」と公表し、翌2018年には、英国から「孤独担当大臣」の新設が発表されたのです。

 

英国は、特に「孤独がアルコール依存症、薬物依存症やうつ病などの病気のリスクを高める」ことや「男性が孤独の犠牲者になりやすい」として、10年ほど前から本腰を入れて対策に取り組んでいます。孤独な人の身の回りの世話や話し相手になるソーシャルワーカーなどの組織、24時間365日の電話相談サービス、男性だけのDIY工房や「歩くサッカー」(身体に負担の少ない走らないサッカー)教室などがすでに数多く存在しています(岡本純子『世界一孤独な日本のオジサン』角川新書2018年)。

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ストップthe熟年離婚

ストップthe熟年離婚

清水 一郎

幻冬舎メディアコンサルティング

夫や妻に対して積もったイライラ、そしてある日訪れる、熟年離婚の危機。人生100年時代と言われる今、残りの人生を有意義に過ごすための方法とは。統計データを基に夫、妻の攻略法を徹底解説。夫婦間で起きる問題と、その対処…

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