安定的な収入を維持するカギは「賃貸管理」
不動産投資の物件運営に欠かせない「賃貸管理」について解説していきます。不動産投資を始める際、物件の選定に力を入れる人は少なくありませんが、この賃貸管理にも着目しておくことが大切です。
そもそも、なぜ不動産投資に賃貸管理が重要なのでしょうか。それは、不動産投資というものが中長期的に行われることを基本としているためです。もちろん短期間で売却することもありますが、基本的には、中長期的に保有することを軸にしています。
それというのも不動産投資のメイン収入は、入居者から得られる家賃収入であるからです。家賃を得て、融資の返済(元金+利息)に充てつつ、残りの部分が純粋な利益となるわけです。そこに、賃貸管理の重要性が隠されています。
要するに、入居者を安定的に獲得すること、そして家賃水準および入居者を維持していくことは、不動産投資における最大のキーポイントとなります。そしてそれは、賃貸管理によって実現できる事柄です。
用語の詳しい解説については後述しますが、賃貸管理には大きく「入居管理」と「物件管理」の二つがあります。前者は入居者を獲得するためのもの、そして後者は物件の価値および入居者を維持するためのものになります。
これら賃貸管理が適切に行われていなければ、思うように入居者を獲得できないか、獲得できたとしても維持することができません。たとえ好立地の物件でも入居者が次から次へと離れてしまっては意味がないのです。
管理会社の活用が不動産投資の成功につながる理由
不動産投資における賃貸管理について考える際には、この入居管理と物件管理の双方をバランスよく検討し、どちらもおろそかにすることのないよう厳しくチェックしていく姿勢が必要です。特に業者に委託する場合はなおさらです。
不動産投資は外部業者に委託することで、ほぼ自動化することができます。自動化することによって不動産投資家は意思決定に注力できるようになり、かつ余計な労力や時間を投資しなくて済むようになるのです。
この点は、ほかの投資と比較しても優れているポイントとなります。そしていかに自分の労力と時間を費やさずに投資を行えるかは、中長期的に見て決して軽視できないことです。なぜなら別の活動に労力と時間を投下できるからです。
一般的な事業を考えてみるとわかるように、企業の経営者は基本的に現場の仕事を行いません。現場の仕事を行ってしまうと、会社を運営するために必要な意思決定や戦略立案、さらには資金調達およびトップ営業ができなくなってしまうためです。
もちろん小さな企業であれば、社長自ら現場仕事をしているケースもあるでしょう。しかし、上場しているような大手企業であれば、経営者(経営層)は現場仕事をしません。それが企業全体が稼ぐために必要不可欠だからです。
不動産投資もまた、一つの事業運営と同じです。自分で何でもやろうとすれば、本当にやるべき物件の選定や意思決定ができず、また融資付けに使う労力と時間もなくなってしまいます。また会社員の方であれば、本業にも支障をきたす可能性があるでしょう。
投資の成功は、本業やプライベートに影響を与えずに実現するのがベストです。そう考えると、賃貸管理という重要事項を自分でやるのではなく、任せられる体制を整えることが不動産投資の成功につながるのだとおわかりいただけるのではないでしょうか。
最低限押さえておきたい賃貸管理の基礎知識
不動産投資家が押さえておくべき賃貸管理の基礎知識は、物件を購入し、管理運営していくまでの流れを踏まえて把握することが大切です。まずはどのような流れで物件の管理運営に至るのかを学んでおきましょう。
物件を購入したあと、まずやるべきは「入居者の募集」です。すでに入居者がいる中古物件であればこの過程は必要ありませんが、入居者がいなかったり空室があったりする場合には入居者の募集をかけなければなりません。
通常、入居者の募集は管理会社の窓口やホームページ、ポータルサイトなどで行われます。これらの管理運営には人件費や広告費がかかるため、不動産投資家はそれらの費用も計算に入れて、シミュレーションをしておく必要があります。
入居者が獲得できるかどうかには地域差があります。たとえば住宅需要の高い激戦区などでは、一定の広告費用をかけなければ入居者が集まらないケースも多く、その点も踏まえて戦略的に投資していかなければなりません。
入居者が無事に集まれば、その後は賃貸借契約などの手続きを経て、実際の入居へと至ります。ただ仲介業者を入れている場合は、仲介手数料も支出しなければなりません。通常これらの費用は、物件購入の検討段階で加味しておくことになります。
ちなみに、仲介手数料は不動産投資家(オーナー)と入居者の双方から支出されています。仲介会社はそれぞれの仲介手数料を得て事業を行っているというわけです。宅地建物取引業法では、仲介手数料について次のような規定が設けられています。
●借主と貸主の双方が仲介手数料を負担する場合はそれぞれ家賃の0.5ヵ月以内となる
●依頼者の承諾があれば、いずれか一方から家賃1ヵ月分以内の仲介手数料を受け取れる
●借主と貸主から受け取る報酬の合計額は、賃料の1ヵ月分以内でなければならない
このように、不動産業者が受け取れる仲介手数料は法令で定められています。しかも、この規定はあくまでも上限を定めているものなので、当然に上限額を請求できるわけではないという点も押さえておきましょう。
ここで考えておきたいのは、不動産業者に仲介を依頼するケースの広告料等についての取り扱いです。入居者の獲得には広告料の支出が不可欠な場合も多いですが、仲介業者を入れている場合、その広告料はだれが負担するべきなのでしょうか。
通常、仲介業務の過程で発生する費用に関しては、不動産業者は依頼者に請求することができません。それは広告費用や入居の案内にかかる費用についても同様です。それらは仲介手数料に含まれると解釈されているためです。
ただし、注意が必要なのは、“例外的”な措置も認められているという点です。例外とは依頼者からの特別な依頼に応じて発生した実費については、依頼者に請求することができるという規定のことです。
具体的には「依頼者の依頼に基づいていること」「通常の仲介業務では発生しない費用であること」「実費として発生していること」などが条件となります。費用の根拠を明確にし、余計な費用を支出しないように注意しましょう。
このようにして入居者を獲得したあと、入居後の管理が始まります。入居後の管理には主に入居者対応(家賃・管理費の集金、クレーム対応等)と物件管理(清掃やメンテナンス等)があります。管理費用は業者によって異なりますが、家賃の5~10%が目安です。
以上のように、入居付けに必要な作業と入居後に必要な作業とを区別して、管理業務全体をイメージしておきましょう。
不動産管理における「PM」と「AM」の役割
不動産投資の管理に関連する業者は、入居までの流れを担当する業者(仲介業者等)と、入居後の管理を行う業者(物件管理会社等)に分類できます。それぞれの役割の違いを理解したうえで、委託することが大切です。
またそれ以外にも、「PM」と「AM」という用語で不動産業者を分類することもあります。では、PMとAMはそれぞれ何を意味し、どのような役割を担っているのでしょうか。その違いと特徴についてチェックしておきましょう。
●PM(プロパティマネジメント)
不動産管理におけるPMとは、「プロパティマネジメント」のことを意味します。プロを行う業者を指します。
通常、賃貸管理といえばPMを意味していると考えて間違いないでしょう。ただしこのPMに関しては、不動産投資家からの不満も少なくありません。入居付けから物件管理、さらには入居者のフォローまで、幅広い業務を担うことになるためです。
そしてそれらの業務範囲は、対応する業者ごとに異なります。投資物件の「経営」全般までそつなくこなしてくれる業者もいれば、必要最低限の業務しかせず、清掃などはオーナーに任せているところもあります。
また、入居付けや集金管理など、それぞれの業務に強みを持った業者もいます。トータルでマネジメントしてくれる業者に不満がある場合は、それらの強みを持った業者に委託することを検討する必要があります。
●AM(アセットマネジメント)
不動産管理におけるAMとは、「アセットマネジメント」のことを意味します。AMの仕事は、PMよりも大局的な部分を踏まえています。具体的には、不動産投資家の経営状況をウォッチし、投資家の代わりに必要な対策を行うのが主な仕事です。
多くの不動産投資家は、複数の物件を所有しています。保有する物件数が増えれば増えるほど見るべきポイントも多くなるため、外部の専門家にチェックしてもらう必要があるのです。そこにAMの必要性があるというわけです。
ちなみにアセットマネジメントは、直訳すると「資産管理」を意味します。そのため物件管理という枠を超えて、投資利回りを最大化するための投資顧問業務全般を行う業者もあります。まさに資産全体の管理です。
従来の不動産投資家は、よほど扱う物件の数および規模が大きくならない限り、個人でAMを活用するという発想はなかったかと思います。しかし、より効率的に不動産投資を行っていきたいと考えるならAMの活用も検討するべきでしょう。
以上のように、不動産管理におけるPMとAMにはその役割と業務内容、さらには不動産投資家にもたらす価値に大きな違いがあります。それぞれの特徴を踏まえたうえでどのように活用していくべきかを考えることが大切です。
特に、これまでAMの活用を視野に入れていなかった人は、不動産投資の効率性という観点から「資産管理の専門家とともに投資を行う」という視点を持ってみてください。そこに不動産投資家の成長を促進させる要素があるかもしれません。