妹2人が、高圧的な長姉に抱いた「不信感」
O山さん姉妹はともに独身の50代と40代の女性です。母親は25年前に亡くなり、母親が亡くなる前後からずっと家事を切り盛りしていて、婚期を逃してしまったとのことでした。
父親はもともとは農家でしたが、若いときに知人と鉄工所の共同経営を始めたことをきっかけに、4つの会社を経営するようになりました。会社はすべて自分の所有地に建てて運営しており、いずれも軌道に乗っていることから、商才や人望があったということでしょう。
O山さんは4人きょうだいです。いちばん会社経営に向いていたのが長女で、父親が健在のときから、すべての会社の経営にかかわっていました。長男も役員に名を連ねてはいますが、父親が体調を崩して入院して以降、長女がほとんどを仕切るかたちで運営されてきました。
O山さん姉妹は実家の家業にかかわることなく、それぞれ独立して生活していますが、父親の世話をするために交代で実家に通ったり、父親が入院してからは手続きのほか、入院生活のこまごまとした面倒をすべて引き受けるなど、父親の生活全般を支えてきました。しかし、姉からは常に蚊帳の外に置かれ、父が亡くなってからも相続に関する説明を一切してもらえませんでした。そのため、不安や不満が募っていました。
姉は昔から高圧的な態度で、おとなしいタイプの兄も頭が上がりません。そのため、何事も常に姉のペースで進んできたそうです。
被相続人:父(配偶者はすでに故人)
相続人 :子4人(長女、長男、次女〈相談者〉、三女〈相談者〉)
事業を手伝ってきた姉が相続のすべてを取り仕切る
父親が亡くなったときも、当然のごとく相続手続きを仕切ったのは姉です。
なにも説明がなく、O山さん姉妹の不信感は募る一方でした。2人は父親の財産の内容がまるでわからないため、まずは説明を求めたのですが、姉はいままで同様高圧的な態度で、不都合なことは説明しようともせず、どうにも信用できません。
O山さん姉妹は、姉が2人の妹にわずかな金銭を相続させてすませようとしているのではと考え、ますます姉妹の溝は深まってしまいました。
姉に「相続税を払うために土地を売るから」といわれ、用意された書類に印鑑を押したものの、その後が予定通りに進みません。土地の仲介には遠縁の親戚が入っており、姉が自分に有利になるよう話を進めているのではないかとの疑念をもつようになりました。
本当に土地売却の契約が進んでいるのか、相続税は払えるのか、申告は間に合うのか等々、不安になるばかりで、筆者のもとに相談に訪れたのでした。