「遺言書はお金持ちが書くもの」という認識はもはや時代遅れです。遺言書のない相続は「もめて当然」といっても過言ではありません。何より、相続争いは富裕層ではない家庭でこそ起きがちなのです。※本記事は、税理士法人・社会保険労務士法人タックス・アイズ代表 五十嵐明彦氏の著書『子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部を抜粋し、被相続人である親自身が取り組むべき相続対策を解説します。

「財産を渡したくない子」を相続人から除外する方法

代々受け継いできた財産であれば、孫の代まで残してほしいと思うでしょうし、自分が築いた財産は子どもに有効利用してほしいと思うでしょう。

 

でも、子どものなかに、ろくに仕事もせず、ギャンブルで借金をつくっては、そのたびに自分が肩がわりをしてきたような子どもがいたらどうでしょう。たとえ自分の子でも、「この子には財産を残したくない」と思うかもしれません。このような場合は、一定の手続きを踏むことで、その子どもの相続権を失わせることができます。これを「相続廃除(はいじょ)」といいます。無条件に相続廃除をすることはできませんが、以下の条件を満たせば認められます。

 

●あなたに対する虐待があった場合

●あなたに重大な侮辱を与えた場合

●あなたの財産を不当に処分したり、賭博などでつくった多額の借金をあなたに支払わせたなど、著しい非行があった場合

 

このような場合は、家庭裁判所に請求するか遺言書に意思表示をすることで、相続廃除を申し立てることができ、裁判所が認めたときにはその子どもは財産を相続できなくなります。もしも、残念ながらこうした希望がある場合は、事前手続きが可能ですので弁護士や司法書士など専門家に問い合わせをしてみてください。

「遺言書なし」の相続はもめるのがセオリー

遺言書とはその名の通り、みなさんの遺言を書面にしたものです。遺言書があれば、相続はそれにしたがってすすめられます。遺言書とは法律的に、だれにどの財産をどれだけ相続させるかを伝えるものです。

 

「だれにどれだけの財産を相続させるか」については、法定相続分にしたがわなければならないと勘違いされている方が多いのですが、遺言書の内容は法定相続分に優先することになっています。

 

また、「自分の財産は法定相続分ずつ相続させればいいから、自分は遺言書を書かない」という方もいらっしゃいますが、遺言書がない場合は自動的に法定相続分で財産を分けることになるわけではなく、法定相続人全員が話し合い(これを「遺産分割協議」といいます)をして、それぞれの取り分を決めることになります。

 

みなさんの財産が法律で自動的に分割されれば、家族がもめるようなことはありませんが、取り分をみんなの話し合いで決めるとなると、相続はまずもめると思ってまちがいありません。

 

ですから、子どもに迷惑をかけたくないなら、いずれの場合もやはり遺言書を書くことを、本連載ではおすすめしたいと思います。

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子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい

子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい

五十嵐 明彦

ディスカヴァー・トゥエンティワン

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