大切な人たちが自分の遺産をめぐって争う姿は見たくないものです。そのためには「隠し事」をきちんと打ち明けることが大切ですが、絶対にバレたくない秘密がある方もいるでしょう。愛人やその間の子はその最たる例です。秘密を保持したまま相続を穏便に済ませるには、どうすればよいのでしょうか。※本記事は、税理士法人・社会保険労務士法人タックス・アイズ代表 五十嵐明彦氏の著書『子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部を抜粋し、被相続人である親自身が取り組むべき相続対策を解説します。

「親の熟年結婚」は相続争いの火種そのもの

実は今、「もう一度結婚しようかな」と思っていませんか? 最近は、熟年結婚や熟年離婚が当たり前の世のなかになりましたね。

 

ちなみに相続の観点から言うと、熟年離婚は、離婚した相手が自分の財産を相続する権利がなくなるだけのことです。離婚しても、子どもは子どものままで変わらないですし、子どもに相続をさせれば、それほど大きな問題はありません。

 

これに対して、熟年結婚は、新たに相続人が1人増えることになりますから、子どもからしてみると大問題です。

 

みなさんが歳になり、パートナーが亡くなったあと、こっそり再婚したとしましょう。みなさんには子どもが2人いると仮定します。

 

みなさんが再婚しなければ、財産は子ども2人が半分ずつ相続する権利がありますが、もしみなさんが再婚をすると、新たなパートナーが1/2の権利をもつことになって、子ども2人は財産の1/4ずつしか権利がないことになります。

 

こんなとき、せっかく人生の最後を一緒に過ごそうとしている相手なのに、子どもたちから、「あの人は財産目当てに結婚したにちがいない」などと言われたらショックですよね。

 

こうしたケースでは、仮にもしみなさんが「相手の相続は放棄させるから、結婚させてほしい」などと言ったとしても、放棄するのはみなさんが亡くなったあとのことですから、子どもたちの気持ちは変わらないかもしれません。

 

また、「遺言書に財産は子ども2人に相続させると書くから」と言っても、新しいパートナーには配偶者として財産の1/4の遺留分がありますから、やはり状況は同じかもしれません。

 

そんなときは、新しいパートナーにひとまず許しをもらい、遺留分を主張しないことを約束してもらう手続き(これを「遺留分の放棄」といいます)をとってもらうというのが1つの手かもしれません。

 

この手続きは、家庭裁判所に申し立てをして、家庭裁判所の許可を得ることが必要になりますが、裁判所が認めた場合には、パートナーが遺留分の主張をすることができなくなるものです。

 

自らそのような手続きをとることで、「財産だけを目当てに結婚するわけではない」ことが明らかになれば、子どもたちも少しは安心するかもしれません。

 

こうして子どもをひとまず安心させたら、そのうえで(遺留分の放棄は相続放棄ではありませんので)、パートナーには別途財産を遺すことを遺言書に書いたり、生命保険に入ってお金を遺すようにすれば、大きなトラブルをさけられるかもしれません。

 

みなさんがもし子どもに内緒で再婚してしまったら、残念ながらみなさんのパートナーと子どもの間では、高い確率で激しい相続争いが起こることになります。

 

自分の人生をどう生きるかは自由です。でも、自分がいなくなったあとに自分の大切な人たちがもめないよう、できることはすべてやってあげる配慮が大切かもしれませんね。

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子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい

子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい

五十嵐 明彦

ディスカヴァー・トゥエンティワン

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