「遺言書はお金持ちが書くもの」という認識はもはや時代遅れです。遺言書のない相続は「もめて当然」といっても過言ではありません。何より、相続争いは富裕層ではない家庭でこそ起きがちなのです。※本記事は、税理士法人・社会保険労務士法人タックス・アイズ代表 五十嵐明彦氏の著書『子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部を抜粋し、被相続人である親自身が取り組むべき相続対策を解説します。

 

「平等に分けよう」という意志がお互いにあっても、「何が平等なのか」についてはお互いの感覚によって違いますから、相続人間の遺産分割協議ではどうしてもまとまらないケースが多いのです。

 

ちなみに、家庭裁判所で行われた遺産分割調停のうち、相続財産が5,000万円以下の案件が全体の約75%を占めているというデータもあります。子どもたちによる「骨肉の争い」は、親として、なんとか避けたいところですよね。

 

人というのは、たとえ財産が1,000万円しかなくても、やっぱりもらえるものは欲しいのが本音です。

 

あなたの財産が1,000万円でも10億円でも、相続する子どもたちにとっては変わらない、むしろ金額が小さいからこそ、取り分の差にリアル感があって、もめるケースが多いと言えます。

 

兄と弟の相続額の差が、それぞれ4億円と6億円であるならば、少ないほうでも「4億円もらえればいいか」という気持ちになるかもしれませんが、これが400万円と600万円というリアルな差になると、子どもたちはどうしてもその200万円の差が許せなかったりするものです。

 

財産規模が小さいほうが「差額」でモメやすくなる事実
財産規模が小さいほうが「差額」がリアルになるため、揉めやすい

 

また、預金のように簡単に分けられる財産だけならいいですが、不動産のように分けにくい財産もあります。不動産が複数あれば、相続人それぞれに相続させることもできるでしょうが、不動産が1つしかないような場合には、だれがどのようにその不動産を相続するかというのは、なかなかむずかしい問題です。そんなとき遺言書があれば、「遺言通りに分ける」ことで、もめる可能性がかなり減ります。

 

また、遺言書があれば、だれが相続するかが明示されていますから、遺言書に沿って、預金や不動産などの名義書き換え手続きができます。

 

しかし、遺言書がない場合には、ほとんどの場合、どのように遺産分割をしたかを記載した書面(「遺産分割協議書」といいます)を作成して、法定相続人全員が、実印で押印をしなければなりません。

 

この遺産分割協議書は、ひな型を見ながら自分で作成することもできますが、むずかしい書類なので弁護士や司法書士などに依頼するケースもあります。

 

このような手間を省いてあげるためにも、財産の多寡にかかわらず、遺言書をつくることをおすすめしたいと思います。

 

 

五十嵐 明彦
税理士法人・社会保険労務士法人 タックス・アイズ 代表

子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい

子どもに迷惑かけたくなければ相続の準備は自分でしなさい

五十嵐 明彦

ディスカヴァー・トゥエンティワン

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