株を購入するときには、どのようなステップが必要で、何を参考にするべきなのでしょうか。ここでは、株の購入方法から、購入に際して参考にしたい企業の財務データのポイントをについて解説します。

まずは証券会社で口座を作る

では実際に株を購入してみましょう。


まず、株の購入は証券会社でのみ行えるので、証券会社に口座をつくってみてください。口座をつくるだけなら無料ですし、証券会社の口座を一つ持っておけば債券も投資信託も簡単に買えるようになります。お勧めは、手数料が安くインターネット上で銘柄を比較できるネット証券会社です。

 

最初に、証券会社の口座を開くことを勧めたのは、アカウントを持つことで、証券会社の提供する株価や企業の情報を簡単に検索したり、一覧で比較したりできるようになるからです。


といっても、株は債券と違って、利回りも元本も保証されてはいない投資商品ですから、簡単には決められません。また種類も非常に多いため、どこから手をつけて、何を買ってよいか分からないでしょう。

2社の株を購入し、比較してみる

そもそも前提として、ある会社の株を購入することは、その会社の株主になることです。そこで、基本的には、自分がその会社に資本参加してもよいと思える会社を、まずは2社選んでみてください。

 

1社でなく2社必要なのは、比較するためです。アップルやグーグルのように、自分の好きな製品やサービスをつくっている会社でもよいでしょう。あるいは、アマゾンやフェイスブックのように自分が普段から頻繁に利用している会社を選ぶのも一つの手です。

 

またはスターバックスやマクドナルドのように、身近な会社を選ぶという方法もあります。ここではあえて外国の会社ばかりを例としてあげましたが、初心者には日本の会社を選ぶことをお勧めします。外国の会社より日本の会社のほうが情報を手に入れやすいですし、為替変動リスクもないからです。

会社の業績の分析はさほど難しくない

会社を選んだら、次にはその会社の業績を分析してみます。といっても、最初は財務諸表や会社四季報を見る必要はありません。初心者は、証券会社が提供してくれる企業データだけで手いっぱいでしょう。最初に、ROE(Return On Equity:株主資本利益率)を見てください。ROEは次の式で求められます。

 

 ROE(パーセント)=当期純利益÷株主資本×100

 

株主資本とは貸借対照表の資本の部の合計で、純利益とは損益計算書の当期純利益になります。簡単に言えばROEとは、株主が提供したお金(株主資本)で、どれだけの利益を上げたかを見る数値です。いわば、その会社自体が株主資本に対してどれだけの利回りを上げているかを見るものです。


あなたが選んだ2社のROEを比較してみましょう。数字が高いほうが、資本を効率よく使って利益を上げている企業といえます。ROEの高い企業は、株主の出資金に対する収益率が高いことになりますから人気が出て株価も上がる傾向にあります。


日本の企業はアメリカやイギリスの企業に比べてROEが全体的に低いようです。一説には日本企業の平均ROEは7~8%で、アメリカの企業の平均ROEの半分しかないともいわれています。


日本企業の経営者がROEを高めることにあまり熱心でないともいえます。その理由として考えられるのは、日本には企業に長期投資をする代わりに、しっかりと利益率を高めて成長することを促す優良な株主が少ないことです。株式投資が増えれば、日本企業も、もっと株主のことを考えた経営に取り組むようになることでしょう。

 

安倍政権もコーポレートガバナンスを向上させたり、社外取締役の導入を促したり、高いROE企業のみを選択したインデックスをつくったりして、日本企業のROEを高めさせるよう努力しています。

利益を算出してみる

では、選択した2社について、次はEPS(Earnings Per Share:一株当たり利益)を算出してみましょう。EPSは次の式で求められます。

 

 EPS=当期利益÷期末の発行済み株式数

 

EPSは一株当たりの利益ですが、一株当たりの額面価格は会社によって違うので、単純に比較することはできません。また、株の場合は額面価格と時価とが大きく異なります。そこで、もう一段階加工して、PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)といわれる指標にしてみましょう。

 

 PER=株価÷EPS(一株当たり利益)

 

PERは株価をEPSで割ったもので、その株が生み出す利益と株価との関係を表します。PERが高い場合は一株当たりの利益の割に株価が高いことを示し、PERが低い場合は一株当たりの利益の割に株価が低いことを示します。そのため、一般的にはPERの高い企業が株式市場における人気企業で、PERの低い企業は不人気企業ということができます。


逆に言えば、PERの低い企業は株価が割安になっているので狙い目ともいえます。ただし、PERの低い企業は、将来性が低い業種だとか、何らかの問題を抱えているとか、低くなるそれなりの理由があると考えたほうがいいでしょう。EPSもPERも、当期利益が高ければよい数字になるので、単年だけで見るのではなく過去数年にわたって継時的に比較してみましょう。


また、EPSはあくまでも一株当たりの会社の上げた利益であって、配当金の金額ではないことにも注意しましょう。一般にEPSの高い企業は配当金も高くなりがちですが、成長しているベンチャー企業の場合は、利益を配当金に回さず内部留保して新規事業へと投資することも多いのです。

 

例えばアップルやマイクロソフトはあれだけ利益を上げているにもかかわらず、長年、配当金を出さない企業として有名でした。配当金を出すよりも、内部留保してさらなる成長を目指したほうが株価も上がって、結果的に株主の利益になるとの理屈です。

 

実際に両社の成長率は目覚ましかったので株主も文句を言いませんでしたが、成長にかげりが見えてくると株主も配当金を要求するようになります。現在は両社ともに配当金を出しています。

比較することで見えてくるもの

さて、あなたが選択した2社のROE、PERを比較してみると、今まで見えてこなかった企業のある側面が見えてきます。一般的な知名度やブランド力が高くても、利益率はそれほどでもなかったり、株式市場では人気がなかったりするものです。

 

会社の経済状況は利益だけではかれるものではありません。利益が上がっていなくても資産が膨大にあれば、当面のところ経営には問題がないともいえます。創業したばかりの会社は利益などありませんが、それだけをもってだめな会社と見ることはできません。


そこで次は、一株当たり純資産(BPS‥Book-value Per Share)も計算してみましょう。

 

 BPS(円)=純資産(すべての資産から負債を差し引いたもの)÷ 発行済みの株式数

 

EPSは一株当たりの利益ですが、BPSは一株あたりの純資産です。一株あたりの価格はやはり企業によって異なるので、こちらもEPS同様に株価との関係で見るのが一般的です。それがPBR(Price Book-Value Ratio‥株価純資産倍率)です。

 

 PBR(倍)=株価÷BPS

 

PBRは株価が一株あたりの純資産と比べて何倍になっているのかを示す指標です。もし、PBRが1倍未満であった場合には、その企業のすべての株の価格(時価総額)よりも帳簿上の純資産のほうが多いわけですから、企業を解散して資産をすべて売り払ってしまえば利益が出ることになります。

 

ということは、何億円かを用意して全株を買い占めて会社を畳んでしまえば、それだけで儲かってしまうわけで、利益を出したいだけならぜひ投資しましょうと言いたくなります。もちろん、現実にはそんなことは不可能です。

 

株というものは有限で、会社整理が目的ですべての株を買い占めようとしても既存株主が売ってくれないからです。どうしても買いたいと交渉した場合は、足元を見られて、市場価格よりも高い価格で買収せざるをえなくなります。


また、PBRやBPSで使用する純資産の金額は、あくまでも帳簿上の金額です。実際に現金化しようとしたときに、土地や建物などが帳簿価格で売却できるかどうかは分かりませんし、会社を清算するにあたっては従業員への退職金などさまざまな出費があります。
とはいえ、PBRの低い会社はやはり株価が割安といえます。実際にPBRはM&A(企業買収)の指標としてもよく使われていますし、PBRが低いということは株価の割に資産が多いことを示します。


PBRはPER同様に、株式市場における人気のバロメーターです。PBRの高い企業は人気が高く、そのために割高となっています。逆にPBRの低い企業は割安ですが、資産の使い方が下手で効率が悪いともいえます。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

仮に今、あなたに1000万円の預金があるとしましょう。安倍内閣が掲げるインフレ目標2%が今後毎年達成された場合、その預金の価値は毎年2%、つまり20万円ずつ目減りしていくことになります。預金の金利はもちろんつきますが、現…

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