ここからのドル円相場

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●ドル円は5日に109円台後半をつけ、FOMCを巡る思惑や株安で、11日に106円台半ば付近へ。

●ドル需給は緩和し米長期金利の本格上昇はまだ先とみられ、110~115円のレンジ定着は困難。

●一方、金利差縮小でドル安・円高も限定的、年内105~110円で推移する時間帯が多くなろう。

ドル円は5日に109円台後半をつけ、FOMCを巡る思惑や株安で、11日に106円台半ば付近へ

ドル円は6月2日、1ドル=108円37銭付近に位置していた200日移動平均線を上抜けた後、ドル高・円安の動きが加速し、5日には109円85銭水準に達しました(図表1)。この時の為替市場は、円全面安の展開となりましたが、特に目新しい材料が出た訳ではありませんでした。恐らく、米国株や日本株などが5月下旬頃から上昇基調を強めたなか、円相場がやや遅れてリスクオン(選好)で反応したものと推測されます。

 

しかしながら、6月8日に、翌日からの米連邦公開市場委員会(FOMC)で、イールドカーブ・コントロールの議論が進むとの思惑などから、ドル安が進行すると、ドル円は再び200日移動平均線近く(同日108円43銭付近に位置)まで水準を戻す展開となりました。その後、FOMCで慎重な経済見通しが示されたことなどを受け、株価が調整色を強めると、ドル売り・円買いが優勢となり、ドル円は6月11日に106円58銭水準をつけました。

ドル需給は緩和し米長期金利の本格上昇はまだ先とみられ、110~115円のレンジ定着は困難

さて、ここでドル円について、少し時間をさかのぼってその動きを確認してみます。ドル円は、2016年6月安値と11月安値を結んだ下値支持線と、2015年6月高値と2017年1月高値を結んだ上値抵抗線によって、三角保ち合い(もちあい)を形成していました(図表2)。しかしながら、2018年夏頃までに、いずれの線も明確に抜けることなく、三角保ち合いは消滅しました。その後、ドル円はおおむね105円から115円の間で推移しています。

 

この先、ドル高・円安を促す材料として、①ドル需給のひっ迫、②米長期金利の上昇、が挙げられます。ただ、①は、すでに米連邦準備制度理事会(FRB)による流動性支援策で解消しており、②は、景気回復による長期金利上昇はまだ先と思われ、当面FRBも量的緩和などで長期金利の上昇抑制に努めるとみられます。そのため、ドル円が前述のレンジの上半分である110円から115円に定着するのは、現時点ではまだ難しいと考えます。

一方、金利差縮小でドル安・円高も限定的、年内105~110円で推移する時間帯が多くなろう

一方、ドル安・円高を促す材料としては、新型コロナウイルスの感染第2波が世界的に拡大し、リスクオフ(回避)の動きが強まることなどが挙げられます。ただ、おおむね105円から115円のレンジが続く2018年夏頃から足元まで、105円を超えるドル安・円高の動きは一時的なものにとどまっています。これは、日米金利差の縮小が続き、極端なドル安・円高が進みにくくなったものと推測されます。

 

なお、仮にFRBがマイナス金利政策の導入に踏み切れば、105円を超えてドル安・円高が進む公算は大きくなると思われます。ただ、今のところFRBにマイナス金利政策を導入する意向はみられません。以上より、ドル円は年内、おおむね105円から115円での推移が続き、特にレンジの下半分、すなわち、105円から110円で推移する時間帯が多くなると予想します。

 

(注)データは2020年5月1日から6月12日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ドル円相場と200日移動平均線 (注)データは2020年5月1日から6月12日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)データは2015年1月から2020年5月。下値支持線は2016年6月安値と11月安値を結んだ線。上値抵抗線は2015年6月高値と2017年1月高値を結んだ線。  (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]ドル円の下値支持線と上値抵抗線 (注)データは2015年1月から2020年5月。下値支持線は2016年6月安値と11月安値を結んだ線。上値抵抗線は2015年6月高値と2017年1月高値を結んだ線。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ここからのドル円相場』を参照)。

 

(2020年6月15日)

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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