本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●FRBはSMCCFの機能を拡充、流通市場全体の指数を構成できる形で社債購入が可能になった。

●FRBの政策により企業、中小企業、家計、州や市など幅広い経済主体の流動性確保が容易に。

●米インフラ投資などの報道も株高要因、感染第2波の警戒が強い官製相場が株価を支えた格好。

FRBはSMCCFの機能を拡充、流通市場全体の指数を構成できる形で社債購入が可能になった

米連邦準備制度理事会(FRB)は6月15日、流通市場で社債を購入する制度「Secondary Market Corporate Credit Facility(SMCCF)」を通じ、社債の買い取りを始めることを明らかにしました。同制度自体は、3月23日に導入が発表されており、もともと流通市場における社債および社債ETFの購入を目的としていましたが、実際に購入されたのは社債ETFでした。

 

今回、SMCCFの機能が拡張され、より幅広い銘柄の社債を購入する方針が示されました。引き続き、SMCCFにおける購入主体は、FRBが設立する特別目的事業体(SPV)で、米財務省からも資金が拠出されます。購入対象は、これまで社債および社債ETFでしたが、今回から、流通市場全体の指数を構成できる形で、個別企業の社債を広く購入できるようになりました。

FRBの政策により企業、中小企業、家計、州や市など幅広い経済主体の流動性確保が容易に

ここで、FRBの主な流動性支援策をまとめてみます(図表)。企業向けには、SMCCFのほか、「Primary Market Corporate Credit Facility(PMCCF)」があります。これは、社債を担保に、FRBのSPVが発行体向けに融資を行うものです。また、中小企業は、「Main Street Lending Program(MSLP)」や、「Paycheck Protection Program Liquidity Facility(PPPLF)」を利用することができます。

 

なお、家計や中小企業向けローンを裏付とする証券を、資産担保証券(ABS)といいますが、これを担保に、FRBのSPVがABSを保有する投資家に融資を行う「Term Asset-Backed Securities Loan Facility(TALF)」という制度もあります。さらに、州や市および郡は、「Municipal Liquidity Facility(MLF)」により、地方債を担保として、FRBのSPVから融資を受けることができます。

米インフラ投資などの報道も株高要因、感染第2波の警戒が強い官製相場が株価を支えた格好

これらの制度の多くは、資産を担保としてSPVが融資を行う形をとっています。具対的には、SPVが、ローンや起債で資金調達する企業や中小企業、家計などの経済主体を、ローンの窓口となる銀行や、債券の発行体などへの融資を通じ、間接的に支援することになります。これによって、企業などの各経済主体は、資金調達をよりスムーズに行うことが可能となります。

 

なお、SMCCFの機能拡充を好感し、6月15日の米国市場では、ダウ工業株30種平均など、主要指数が上昇しました。また、翌16日の日本時間正午前、①トランプ米政権が1兆ドルのインフラ投資を検討、②日銀が企業向け資金繰り支援プログラムの規模を110兆円超に拡大、との報道を受け、日経平均株価は午後の取引で、一時、前日比900円超上昇しました。コロナ感染第2波の警戒が強まるなか、官製相場が株価を支えた格好になっています。

 

(注)公表日はすべて2020年。 (出所)FRBのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表]FRBの主な流動性支援制度 (注)公表日はすべて2020年。
(出所)FRBのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『FRBは個別企業の社債購入拡充へ』を参照)。

 

(2020年6月16日)

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

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