市場予想から大幅にはずれた米雇用統計の本当の姿

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現在の米国雇用の特色として、5月、ヘッドライン『米国失業率、今後の動向の注目点』で一時的解雇の割合が8割程度と過去に例を見ない高さであることを指摘しました。もっとも、非農業部門雇用者数が前月比プラスに転じるほど再雇用が早期に回復するとは想定していませんでした。今回の米雇用統計に関する疑問にお答えします。

米5月雇用統計:非農業部門雇用者数は、市場予想を大幅に上回り前月比プラスに転じる

米労働省が2020年6月5日に発表した5月の雇用統計非農業部門雇用者数は前月比プラス250万人と、市場予想(マイナス750万人)、前月(マイナス2,070万人減と速報値マイナス2,050万人減から下方修正)を大幅に上回りました。新規失業保険申請件数は高水準で推移しているものの(図表1参照)、雇用に回復が見られました。

 

家計調査による失業率は13.3%と、市場予想(19.0%)、戦後最悪だった4月(14.7%)を下回りました(図表2参照)。

 

週次、時点:2020年3月6日週~20年6月5日公表(5月30日週) ※新規失業保険申請件数は累計、継続受給者数は1週間遅れ
[図表1]米新規失業保険申請件数と継続受給者数の推移 週次、時点:2020年3月6日週~20年6月5日公表(5月30日週)
※新規失業保険申請件数は累計、継続受給者数は1週間遅れ

 

月次、時点:2008年5~2020年5月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米失業率(U3、U6)と非農業部門就業者数の推移 月次、時点:2008年5~2020年5月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:一時的解雇、PPP、再雇用、継続受給者数

現在の米国雇用の特色として、前月、ヘッドライン『米国失業率、今後の動向の注目点』で一時的解雇の割合が8割程度と過去に例を見ない高さであることを指摘しました。もっとも、非農業部門雇用者数が前月比プラスに転じるほど再雇用が早期に回復するとは想定していませんでした。今回の米雇用統計に関する次の疑問にお答えします。

 

まず、なぜ予想と実績がずれたのか? あっさりとした答えは企業の再雇用が想定を上回ったことです。雇用が増えたセクターを見ても娯楽及び接客業、小売業、飲食業などで、いずれも3月、4月に雇用を減らしたセクターです。米国の経済活動再開に伴い再雇用が意外と進んだと見られます

 

もっとも、今回の再雇用を強力に後押ししたのは中小企業の給与支払、光熱費などを実質的に補填する給与保護プログラム(PPP)などの米当局の政策支援の役割が大きいと見られます。PPPは再雇用も含め雇用維持が支援を受ける要件であるため、再雇用を加速させた可能性があります。

 

なお、失業率の改善については注意も必要です。労働省によるとデータの分類の問題で、5月の真の失業率は発表数値より3%程高かった可能性を指摘しています。

 

次に、再雇用の動向を何故見逃したのか? についてです。新規失業者申請件数がペースダウンしたとはいえ増加する中、失業率等が悪化するとの見方が支配的だったためです。

 

ただ、再雇用の兆しもありました。失業者の登録数を見る「継続受給者数」と(累積の)新規失業保険申請件数とズレが生じていました(図表1参照)。継続需給者数の減少は再雇用の開始の兆しとの声もありました。一方、新規失業保険申請件数は重複申請などが相当数見られたとの報道もあり、かい離につながった模様です。データ内容の確認が重要です

 

最後に、今回見られた再雇用加速の動きは持続可能か? については、慎重に見極めるべきと見ています。再雇用を加速させた政策には期限があり、たとえば先のPPPは年末までの設計となっています。財政負担も過大となる中、政策頼りの回復には持続性の点で注意が必要だからです。

 

また、回復の道のりは長期となる可能性があります。たとえば、前月比でプラスに転じた非農業部門雇用者数は総数では5月が1億3,300万人程度で、約2,000万人が職を失っている状況です。しかも回復が遅れれば雇用市場に戻れない人が増える懸念もあります。失業率だけでなく、労働参加率など雇用市場の内容に注意を払う必要があると見ています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『市場予想から大幅にはずれた米雇用統計の本当の姿』を参照)。

 

(2020年6月8日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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