投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、マーケットレポート・ヘッドライン。日々のマーケット情報を専門家が分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

>>>12/10(火)LIVE配信

 

現在の米国雇用の特色として、5月、ヘッドライン『米国失業率、今後の動向の注目点』で一時的解雇の割合が8割程度と過去に例を見ない高さであることを指摘しました。もっとも、非農業部門雇用者数が前月比プラスに転じるほど再雇用が早期に回復するとは想定していませんでした。今回の米雇用統計に関する疑問にお答えします。

米5月雇用統計:非農業部門雇用者数は、市場予想を大幅に上回り前月比プラスに転じる

米労働省が2020年6月5日に発表した5月の雇用統計非農業部門雇用者数は前月比プラス250万人と、市場予想(マイナス750万人)、前月(マイナス2,070万人減と速報値マイナス2,050万人減から下方修正)を大幅に上回りました。新規失業保険申請件数は高水準で推移しているものの(図表1参照)、雇用に回復が見られました。

 

家計調査による失業率は13.3%と、市場予想(19.0%)、戦後最悪だった4月(14.7%)を下回りました(図表2参照)。

 

週次、時点:2020年3月6日週~20年6月5日公表(5月30日週) ※新規失業保険申請件数は累計、継続受給者数は1週間遅れ
[図表1]米新規失業保険申請件数と継続受給者数の推移 週次、時点:2020年3月6日週~20年6月5日公表(5月30日週)
※新規失業保険申請件数は累計、継続受給者数は1週間遅れ

 

月次、時点:2008年5~2020年5月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米失業率(U3、U6)と非農業部門就業者数の推移 月次、時点:2008年5~2020年5月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:一時的解雇、PPP、再雇用、継続受給者数

現在の米国雇用の特色として、前月、ヘッドライン『米国失業率、今後の動向の注目点』で一時的解雇の割合が8割程度と過去に例を見ない高さであることを指摘しました。もっとも、非農業部門雇用者数が前月比プラスに転じるほど再雇用が早期に回復するとは想定していませんでした。今回の米雇用統計に関する次の疑問にお答えします。

 

まず、なぜ予想と実績がずれたのか? あっさりとした答えは企業の再雇用が想定を上回ったことです。雇用が増えたセクターを見ても娯楽及び接客業、小売業、飲食業などで、いずれも3月、4月に雇用を減らしたセクターです。米国の経済活動再開に伴い再雇用が意外と進んだと見られます

 

もっとも、今回の再雇用を強力に後押ししたのは中小企業の給与支払、光熱費などを実質的に補填する給与保護プログラム(PPP)などの米当局の政策支援の役割が大きいと見られます。PPPは再雇用も含め雇用維持が支援を受ける要件であるため、再雇用を加速させた可能性があります。

 

なお、失業率の改善については注意も必要です。労働省によるとデータの分類の問題で、5月の真の失業率は発表数値より3%程高かった可能性を指摘しています。

 

次に、再雇用の動向を何故見逃したのか? についてです。新規失業者申請件数がペースダウンしたとはいえ増加する中、失業率等が悪化するとの見方が支配的だったためです。

 

ただ、再雇用の兆しもありました。失業者の登録数を見る「継続受給者数」と(累積の)新規失業保険申請件数とズレが生じていました(図表1参照)。継続需給者数の減少は再雇用の開始の兆しとの声もありました。一方、新規失業保険申請件数は重複申請などが相当数見られたとの報道もあり、かい離につながった模様です。データ内容の確認が重要です

 

最後に、今回見られた再雇用加速の動きは持続可能か? については、慎重に見極めるべきと見ています。再雇用を加速させた政策には期限があり、たとえば先のPPPは年末までの設計となっています。財政負担も過大となる中、政策頼りの回復には持続性の点で注意が必要だからです。

 

また、回復の道のりは長期となる可能性があります。たとえば、前月比でプラスに転じた非農業部門雇用者数は総数では5月が1億3,300万人程度で、約2,000万人が職を失っている状況です。しかも回復が遅れれば雇用市場に戻れない人が増える懸念もあります。失業率だけでなく、労働参加率など雇用市場の内容に注意を払う必要があると見ています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『市場予想から大幅にはずれた米雇用統計の本当の姿』を参照)。

 

(2020年6月8日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【11/19開催】相続税申告後、
約1割の人が「税務調査」を経験?!
調査の実態と“申告漏れ”を
指摘されないためのポイント

 

【11/19開催】スモールビジネスの
オーナー経営者・リモートワーカー・
フリーランス向け「海外移住+海外法人」の
活用でできる「最強の節税術」

 

【11/23開催】ABBA案件の
成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト
「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【11/24開催】事業譲渡「失敗」の法則
―M&A仲介会社に任せてはいけない理由

 

【11/28開催】地主の方必見!
相続税の「払い過ぎ」を
回避する不動産の評価術

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧