米国、所得と消費が逆方向に広がる

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新型コロナウイルスの感染拡大抑制に向けた封鎖政策の影響を反映して4月の消費は自動車などを含む資本財と、娯楽や外食などサービスセクターが大幅なマイナスとなりました。一方、個人所得は市場予想では減少が見込まれていましたが、景気下支え政策(CARES法)により大幅なプラスを確保しました。

米国個人消費支出(PCE):4月のPCEはマイナス13.6%と過去最大の減少、所得は増加

米商務省が2020年5月29日に公表した4月の米個人消費支出(PCE)は統計を取り始めた1959年以降で最大の落ち込みとなる前月比マイナス13.6%と、市場予想(マイナス12.8%)、前月(マイナス6.9%)を下回りました(図表1参照)。

 

一方、個人所得は+10.5%と、市場予想(マイナス5.9%)、前月(マイナス2.2%)を大幅に上回りました。コロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES法)に基づく連邦政府の支援金が押し上げたと、商務省は説明しています。

 

月次、期間:2017年5月~2020年5月(支出と所得は4月まで、前月比)  出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米個人消費支出と所得、消費者マインドの推移 月次、期間:2017年5月~2020年5月(支出と所得は4月まで、前月比)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:PCE、個人所得、移転所得、CARES法

新型コロナウイルスの感染拡大抑制に向けた封鎖政策の影響を反映して4月の消費は自動車などを含む資本財と、娯楽や外食などサービスセクターが大幅なマイナスとなりました。一方、個人所得は市場予想では減少が見込まれていましたが、景気下支え政策(CARES法)により大幅なプラスを確保しました。

 

まず消費動向を示唆するPCEの内容に意外感はありませんでした。予想通り、大幅なマイナスとなったセクターは娯楽サービスがマイナス42.9%、ガソリンがマイナス39.9%、食品サービスがマイナス34.6%となっています。これらのセクターに経済活動の制限の影響が大きく現れました。

 

次に、個人所得については、市場予想とは反対に前月比プラスとなりました。なお、消費が大幅なマイナスとなる一方で、所得が増加したことから、4月の貯蓄率は33.0%と歴史的な上昇を記録しました(図表2参照)。

 

月次、期間:1960年4月~2020年4月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米貯蓄率の推移 月次、期間:1960年4月~2020年4月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

個人所得がプラスとなった背景を簡単に振り返ります。個人所得は半分程度が賃金・給与です。残りの約半分は、資産からの利子や配当の受け取り、社会保障関連の移転所得、年金などで構成されています。

 

4月の個人所得を市場がマイナスと予想していた背景は、恐らく賃金・給与のマイナスを見込んでいたからと思われます。実際、4月の賃金・給与は前月比マイナス8.0%となっています。

 

しかし、賃金・給与以外には前月比で大幅に増加した項目があったため個人所得はプラスとなりました。プラスとなった主な項目は社会保障などの移転所得に組み込まれています。この中には例えば、失業給付などが含まれ、4月は約4300億ドルと、3月の約700億ドル弱から急増しています。総額2兆ドルを越えるCARES法により確保された中小企業向け融資、失業手当の拡充、個人向け現金給付(1200ドルただし所得による変動あり、17歳未満は500ドル)が(予想以上に)個人所得を押し上げたと見られます。

 

なお、貯蓄率について補足すると、CARES法では学生ローンの返済の一時的な免除は貯蓄率の上昇要因になると見られます。マクロ的には消費者の懐に余裕がみられます。

 

問題は、移転所得に計上された所得の増加は時限的な対応で、この多くが4月に実施されたならば、5月の個人所得は減少する可能性があります。失業給付も現段階では7月末が期限とされています。大胆な政策を受け、消費者マインドに底打ちの兆しは見られますが、雇用の回復が見通せないならば、本格的な消費回復に不安も残ります。自律的な回復で雇用が維持されるのか注意する必要があると見ています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国、所得と消費が逆方向に広がる』を参照)。

 

(2020年6月1日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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