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新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気への影響は極めて深刻ながら、米連邦準備制度理事会(FRB)などによる流動性供給や、各国の財政政策拡大を受け、株式市場は回復傾向です。足元では、都市封鎖が緩和方向にあることに加え、「期待」を示す経済指標にも回復が見られ、市場の下支え要因のひとつと見ています。

欧米5月の景況感指数:調査に基づく景況感は期待を背景に市場予想を上回る回復

ドイツIfo経済研究所が2020年5月25日に発表した5月の企業景況感指数は79.5と、市場予想(78.5)、前月(74.2)を上回りました。特に、半年先を予想しての回答である期待指数は80.1と、市場予想(75.0)を大幅に上回りました(図表1参照)。ドイツ企業は慎重ながらも7-12月(下期)の景気改善を期待していることがうかがえます。

 

米民間調査機関のコンファレンスボードが26日に発表した5月の米消費者信頼感指数は86.6と、市場予想(87.0)にほぼ一致し、前月(85.7と速報値86.9から下方修正)を上回りました。一方、期待指数は96.9と、前月の94.3を大幅に上回りました(図表2参照)。
 

月次、期間:2017年5月~2020年5月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ドイツIfo企業景況感指数の推移 月次、期間:2017年5月~2020年5月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

月次、期間:2017年5月~2020年5月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米コンファレンスボード消費者信頼感指数の推移 月次、期間:2017年5月~2020年5月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

Ifo企業景況感指数、期待指数、消費、再雇用

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気への影響は極めて深刻ながら、米連邦準備制度理事会(FRB)などによる流動性供給や、各国の財政政策拡大を受け、株式市場は回復傾向です。足元では、都市封鎖が緩和方向にあることに加え、「期待」を示す経済指標にも回復が見られ、市場の下支え要因のひとつと見ています。

 

まず、欧州で5月の企業センチメントを知る指標として、Ifo企業景況感指数を振り返ると、半年先の動向を示唆する期待指数が5月は市場予想を上回り改善しました。

 

Ifo企業景況感指数はドイツの企業に景況感を「よい」「普通」「悪い」で問い合わせる調査で、製造業からサービス業までカバーしています。コロナウイルスの感染を比較的抑制していたドイツで4月中頃から段階的に規制を緩和してきました。現況指数は足元でも悪化しているものの、Ifo期待指数が改善していることから、ドイツ企業にも、現状には目をつぶりつつ、半年後を期待する警戒的な楽観論が見られます。

 

次に、地理的には離れますが、米コンファレンスボードの消費者信頼感指数をみると、消費者マインドは現況指数は軟調ながら期待指数は改善と、企業マインドと同様の傾向が見られました。米国でも州の状況に応じて移動制限など経済活動の制約が緩和される方向の中、消費者のマインド先行きに希望を持ち始めていることがうかがえます。

 

ただ、消費者マインドは不安定な回復である可能性があることに注意も必要です。消費を支える要因のひとつが雇用ですが、今回の調査でも雇用市場の回復には半信半疑と見られるからです。たとえば、半年後の雇用の状況について増えるとする回答は39.3と、4月の41.2から悪化しています。「変わらず」というよくも、悪くもないという回答が40.5で、4月の37.6から増えており期待が高まっていない印象です。別の調査では、新型コロナウイルスにより事業を中断している米国の中小企業のうち、再開後に雇用を元の水準に戻す企業は半数以下という結果とも整合的です。

 

今後月末から来月月初に米ISM非製造業景況指数など先行性のある他の景況感指数を参照するとともに、再雇用の動向を見守る姿勢が必要と考えます。期待という不安定な階段を昇っての市場の回復なのか、それとも、実体を伴う回復かを判断するうえで再雇用動向が重要と見ているからです。


 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『経済活動の制限緩和に伴い期待指数は市場予想を上回る』を参照)。

 

(2020年5月27日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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