各自治体で特別定額給付金10万円の受給案内・申請が始まりつつありますね。案内や申請が世帯主に一本化されていることから、DVで避難されている方などが受け取れないのではないかという問題について、第14回で書かせていただきました。今回はその続編です。世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏が解説します。

DV被害申出の確認書が、民間支援団体でも発行可能に

①保護命令事案・②警察への相談履歴があり住民票を秘匿している事案に加え、③「婦人相談所」によるDV被害申出の「確認書」が発行されている場合には例外的に個別受け取りが可能だとされていました。

 

ここでいう「婦人相談所」とは配偶者暴力相談支援センター、福祉事務所及び市町村における配偶者暴力相談支援担当部署などのことですが、①・②はハードルが高いので、実質上多くの方が③によることが想定され混乱が予想されてきました。

 

これを受け、今では上記の配偶者暴力相談支援担当部署のほか、行政機関や関係機関と連携してDV被害者支援業務を行っている民間支援団体(婦人保護事業委託団体、地域DV協議会参加団体、補助金等交付団体)についても、同確認書の発行ができることになっています(特別給付金HP:配偶者からの暴力を理由とした避難事例における特別定額給付金関係事務処理の運用について)。

 

世田谷区では、DVにより避難している方は、各総合支所の「子ども家庭支援センター」への相談で確認書の発行ができるようになっています(世田谷区HP:配偶者やその他親族からの暴力、性暴力被害、貧困その他の理由が複合的に重なる等により避難している方の特別定額給付金に関する申し出について)。

配偶者からのDVに加え、「親族」からの暴力も対象に

当初は個別支給の申し出の対象となる方は、配偶者DVのみだったのですが、仁藤夢乃さんや弁護士会、その他有識者をはじめとするさまざまな方が声をあげた結果、総務省通知が改められました。

 

申出対象になる方に親族からの暴力・性暴力被害・貧困その他の事由が複合的に重なる等により避難している方が追加になったのです(総務省HP:特別定額給付金に関するお知らせ)。

 

より多くの
より多くの「給付金を必要としている人」が、個別で受け取れるようになった

 

この2年間、世田谷区の人権・男女共同参画担当課と連携して、男女共同参画・多文化共生苦情処理委員会にてお仕事をさせていただいてきました。この問題を受け、同担当課の皆さまが、給付金の柔軟な申請・支給のため昼夜頑張られている様子をお伺いしています。この10万円をもっとも必要とする方々にいちはやく給付金が届くことを願います。

 

◆郵送とオンライン申請、どちらがいいの?

マイナンバーカードによるオンライン申請はすでに受け付けられていますが、マイナンバーカードをこれから申請するのには担当窓口への来庁が必要となりますし、今からマイナンバーカードの申請をしたのでは時間がかかってしまいますので、郵送申請による方もまだまだ多いのではないでしょうか。

外出自粛で問題が表面化して「コロナ離婚」が多発

少し前、共同通信社から、日本のDV、コロナ離婚について、取材を受けました(その内容が、共同ニュースとジャパンタイムスに掲載されました)。

 

取材でお答えした内容について、説明します。

 

But lawyer Eri Mizutani, whose firm handles many divorce cases, said the current talk about corona-related divorce should be put in proper perspective, calling the issue more “deep-seated.”

 

「『コロナ離婚』と今取りざたされていることは、正しくとらえられなければなりません。問題は、本来より根深いものなのです」

 

Mizutani said their divorce consultations in relation to the coronavirus have more to do with serious issues such as domestic violence, increasingly exposed by the longer hours spent at home.

 

コロナに関連する離婚事案のうちには、在宅時間が増加したことにより表面化したDVのような、従前より深刻な事案が含まれています。

 

“It’s not just a simple case of the virus causing the divorce. To start with, there were already underlying factors, with the spouse seeking the right timing (to separate or divorce). And the virus just fueled the timing,” she said.

 

「これまで安泰だった夫婦なのにコロナによって、仲が悪くなったというような単純な話ではありません。すでに潜在的に離婚につながる要因があり、カップルの一方が長年密かに別居や離婚のタイミングを計っていたケースで、コロナがその火種となったというのが本質」なのです。

 

That said, Mizutani sees a potential divorce stemming from two factors — the lack of a sense of crisis shared between the spouses, and economic hardship such as the loss of a job. Divorce consultations may also increase after the crisis is over, as couples assess how they dealt with the crisis, she added.

 

コロナ離婚は、主に2つの要因から生じます。一つは、緊急事態下での危機意識の欠如に対して失望したもの。もう一つは、急激な経済的な困難です。

 

「緊急事態宣言が解除された後も、これらに直面したカップルからの離婚相談は増えていくでしょう」

 

上記は、あくまで、取材に対して一般論をお話ししたものでした。

 

私たち弁護士には職業上の守秘義務がありますから、具体的なご相談の内容について取り上げることはできません。しかしながら、4月~5月にかけては、実際に、コロナ問題から生じる離婚のご相談が多かったのも事実です。

 

可能な限り概括的にご紹介するとすれば、ご相談の傾向として特徴的なのは、DV相談(①)のほかに、外出自粛が呼び掛けてられている中であるにもかかわらず、パートナーが不倫相手と出かけてしまう(②)という不貞事案や、在宅時間の増加でアルコールの傾向が進み、生活が崩壊してしまった(③)というものです。

 

①暴力的傾向、②女性問題、③アルコールその他の依存症問題というのは、もともと、夫婦問題の相談としては主たる要因のナンバー3です。

 

今回の「コロナ離婚」は、そういった従前からあった傾向が一気に際立ったことを表したものにほかなりません。

 

 

 

水谷 江利

世田谷用賀法律事務所 弁護士

 

 

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    本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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