日本企業向け資金繰り支援策〜問題点の整理と今後の課題

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●中小企業などは政府系だけでなく民間金融機関からも実質無利子・無担保の融資を受けられる。
●持続化給付金は10万円未満の額も給付、雇用調整助成金は新制度で補完など、改善が進む。
●全企業規模で、資本注入による支援策も検討、ここからは政策実行のスピード感が極めて重要に。

中小企業などは政府系だけでなく民間金融機関からも実質無利子・無担保の融資を受けられる

現時点で、日本政府による企業向けの資金繰り支援策は、ほぼ出そろったように思われます。主な政策として、①政府系金融機関による実質無利子・無担保融資、②民間金融機関による実質無利子・無担保融資、③持続化給付金、④雇用調整助成金、⑤全企業規模に向けた資本支援、が挙げられます(図表)。そこで、今回のレポートでは、それぞれの政策について問題点を整理し、今後の課題を考えます。

 

①は、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫による、中小企業や個人事業主向けの融資です。「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」の併用により、当初3年間は実質的に無利子となります。ただ、企業が支援を求めて殺到したため、窓口を民間金融機関にも広げるために新設されたのが②の制度です。企業は日頃から取引のある銀行や信用金庫、信用組合に、①と同じ仕組みの融資を申し込むことができます。

持続化給付金は10万円未満の額も給付、雇用調整助成金は新制度で補完など、改善が進む

③の持続化給付金は、感染症の拡大により、営業自粛などで大きな影響を受ける事業者に対し、事業の継続・再起を目的に給付するものです。給付額の上限は、中小企業の場合が200万円、個人事業主の場合は100万円です。4月30日に成立した2020年度の補正予算では、約2兆3,000億円が計上されました。また、給付額は当初、10万円未満は切り捨てでしたが、5月8日に10万円未満の金額も給付するとの方針転換が発表されています。

 

④の雇用調整助成金は、景気悪化などで、企業が雇用調整(休業、教育訓練、出向)した場合、企業が従業員に支払う休業手当の一部を、国が助成する制度です。ただ、雇用調整助成金は申請にあたり、法定書類の準備などが必要で、申請してから支給までの手続きに数カ月を要することなどから、利用が広がっていませんでした。そのため、政府は5月13日、雇用保険の特例制度を設け、休業者本人に直接給付する方針を固めました。

全企業規模で、資本注入による支援策も検討、ここからは政策実行のスピード感が極めて重要に

なお、日銀も、銀行を通じた企業の資金繰り支援に乗り出しています。3月に感染症拡大を受けた金融支援特別オペを新設し、4月には対象金融機関に信用組合などを含め、対象担保に企業債務だけでなく家計債務を加えるなど、制度を拡充しました。また、実質無利子・無担保融資などを実行した金融機関に対し、期間1年以内の資金をゼロ金利で融通する、30兆円規模の新たな資金供給手段の導入を、先週末に発表しました。

 

このように、①から④は、融資や一時金給付にかかわる制度ですが、⑤の資本支援は、資本注入による企業救済制度です。大企業、中堅企業、中小企業、それぞれについて制度設計が行われ、全企業規模の救済措置となる見通しです。企業向けの資金繰り支援は全体として、ここから先、1日でも早く企業の手元に資金が届くよう、政策実行の「スピード感」が極めて重要となります。

 

(出所) 各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表]日本政府による企業向けの主な資金繰り支援策 (出所) 各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本企業向け資金繰り支援策〜問題点の整理と今後の課題』を参照)。

 

(2020年5月25日)

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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