先行CI前月差▲8.1と2ヵ月ぶり、一致CI前月差▲4.9と2ヵ月連続下降
一致CI下降幅はリーマンショック時、東日本大震災時に次ぐ6番目の大きさ
3月分の機械的な基調判断は「悪化を示している」で据え置き
●3月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲8.1と2ヵ月ぶりの下降になった。下降幅は2009年1月分の▲5.7を上回り、85年からあるデータの中で最大である。指数は83.8と09年6月(83.3)以来の10年9ヵ月ぶりの低水準となった。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの全系列が前月差マイナス寄与になった。
●なお、新設住宅着工床面積、マネーストックの2系列は前月差で改善していたが、「共通循環変動」部分が大幅に下降したため「系列固有変動」部分が大幅に上乗せされたことになり、外れ値処理の対象である「系列固有変動」部分が大幅に刈り込まれ、前月差マイナス寄与になるという珍しいことが生じた。
●3月分の一致CIは前月差▲4.9と2ヵ月連続下降になった。下降幅は11年3月分の▲6.3以来の下降幅である。85年からあるデータの中で、リーマンショック時の4ヵ月と東日本大震災時1ヵ月に次ぐ6番目の大きさである。指数は90.5で11年6月(89.3)以来8年9ヵ月ぶりの低い水準になった。速報値からデータが利用可能な7系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の全系列が前月差マイナス寄与になった。
●一致CIの3ヵ月後方移動平均は前月差▲1.26ポイントと、2ヵ月ぶりの下降になった。7ヵ月後方移動平均は前月差▲0.22ポイント下降し、17ヵ月連続の下降になった。
●最近の、一致CIを使った景気の基調判断をみると、5月分・6月分・7月分と「下げ止まり」の判断だったが、8月分で「悪化」に下方修正された。9月分・10月分・11月分・12月分・1月分・2月分に続き、3月分も「悪化」継続になった。8ヵ月連続の「悪化」は、08年6月からの11ヵ月連続以来の長さである。
●3月分の先行DIは22.2%と景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、新設住宅着工床面積、マネーストックの2系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列がマイナス符号になった。
●3月分の一致DIは14.3%と景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な7系列中、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の2系列が保合いに、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の5系列がマイナス符号になった。
●5月25日発表予定の3月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は5月20日である。また在庫率関連データが5月19日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。
●3月分景気動向指数・改訂値で、一致CIには所定外労働時間指数が新たに加わる。3月分速報値は89.1で前月差寄与度は▲0.53程度と下方修正要因になろう。3月分確報値の発表日は5月22日なので、景気動向指数・改訂値では速報値が使われよう。一方、DIではマイナス符号として加わることになろう。他の系列の符号が変わらなければ、一致DIは12.5%で速報値の14.3%から下方修正になろう。生産指数関連データなどが5月19日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。
●4月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。東証株価指数1系列がプラス寄与に、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。
●また、4月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列で全系列がマイナス符号になることが判明している。4月分速報値段階の先行DIは0.0%以上55.6%以下になることが確定している。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年3月分景気動向指数(速報値)』を参照)。
2020年5月12日
宅森 昭吉
株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト