アベノミクスにより、長い不況から脱出しつつある日本。徐々にインフレ傾向が進むなか、お金の価値も下がってきています。安倍内閣が掲げる2%のインフレ率が達成されると、現在1000万円ある預金の価値は、20万円ほど減少してしまいます。これからは、手持ちの資産を運用していくことが大切なのです。
連載の初回はまず、「投資とは何か」についてお話ししましょう。

投資は4つに分類可能

ひと口に「投資」といっても、世の中にはさまざまな種類の「投資」が存在します。そこで、話をわかりやすくするために、「投資」を大きく4つに分けてみます。リスクの低いものから紹介しましょう。

 

1つ目は、投資先が破綻や倒産などをしない限り、元本の返済が保証されている、いわゆる貸金です。満期まで保有した場合、投資家の得る利益は、最初に定めた金利の金額となり、それ以上にもそれ以下にもなりません。銀行預金や国籍などの債券がこれにあたります。

 

2つ目は、投資先の事業そのものに出資という形で参加し、事業の利益を分け前としてもらうものです。事業が成功すれば利益が増えますが、失敗した場合には投資した金額よりも少ないリターンしか得られません(元本割れ)。株式やファンド(投資信託)などがこれにあたります。

 

3つ目は、投資先が事業ではなく単なるモノで、そのモノの値動きによって利益や損失が発生するものです。不動産、金(ゴールド)や小麦などの商品、あるいはFXなどの外国為替がこれにあたります。購入時よりも価格が上がれば利益が出ますが、価格が下がれば損失となります。

 

4つ目として、競馬や競輪やパチンコなどのギャンブルを入れてもいいかもしれません。なぜなら、これらのギャンブルを投資先として生計をたてている人もわずかながら存在するからです。もちろん、リスクが高いのでお勧めはできません。

それぞれのリスクとメリット

3つ目にあげた金や商品や外貨への投資もリスクが高いものです。なぜなら、これらはただ持っているだけでは投資ではなく所有であり、利益を得るためには値上がりが必要となるからです。これらの金や商品や外資などの値動きは、あらかじめ予測することもできますが、そのためには膨大な知識と情報と経験が必要となります。そのため、素人が安易に投資に参加しても、プロにかなわないことが多いからです。


膨大な知識と情報と経験が必要になるという意味では、3つ目の商品と4つ目のギャンブルとはよく似ています。どちらも、それで生計をたてているプロであれば「投資」として利益を上げることが可能でしょうが、素人がむやみに参加するといちかばちかになりがちです。

 

それに比べて、1つ目の債券と2つ目の株式とは、比較的、素人でも参加しやすい「投資」となっています。なぜなら、債券や株式については、利益を上げるのは投資先の会社の仕事であり、投資家はただお金を出すだけでよいからです。


もちろん、お金を出す相手(事業者)が、本当にプロとして確かな腕前を持っているか、あるいは新陽に足る相手であるかどうかの見極めは必要です。しかし、3つ目の商品や4つ目のギャンブルのように、実際にゲームに参加することに比べれば、その苦労は大きく減るでしょう。

 

また、債券や株式は、3つ目の外貨や商品のように、値上がりをしたときに売却して利益を上げることもできます。言い換えれば、1つ目の債券と2つ目の株式とは、投資の利回りと、売却により値上がり益との2種類のリターンを持っていることになります。その意味でも、債券や株式は有利な「投資」方法であるといえましょう。


一般に「投資」商品といわれるもののなかには、ギャンブルのようにハイリスクでハイリターンを狙う「投機」的な商品も含まれています。「投資(investment)」と「投機(speculation)」の違いは、前者が長期的に徐々に利益を重ねていくものであるのに対して、後者は短期的に利ざやを稼ごうとするものです。しかし、短期的な値動きから利益を得る「投機」というものは、リスクが高く、本質的にはギャンブルと変わりがありません。また「投機」には資本力を持つプロが大勢参加しているので、個人投資家が勝ち続けることは困難です。

 

そのため、「投機」、つまり3つ目と4つ目については、積極的にはお勧めしません。投資初心者である方のことを考えて、基本的に1つ目と2つ目の投資方法を中心に紹介していくことになります。

デットとエクイティの違いを理解する

投資家の側から見たときに、投資の基本は、1番目の債券や預金といった元本保証のあるものと、2番目の株式や投資信託といった元本保証のないものとに分けられます。これを、投資を受ける側(会社)から見たときには、1番目はデット(debt:負債)であり、2番目はエクイティ(equit:株主資本)であるという違いになります。

 

デットとは、簡単に言えば借金です。借金ですから返済期日とそれまでの金利を決めて、期日までに元本と金利ぶんの利息をきっちりと返済することになります。投資家側から見れば、相手が返済の約束さえ守ってくれれば、元本が保証された安心できる「投資」商品になります。

 

エクイティとは、簡単に言えば出資です。投資を受ける側から見ればエクイティとは、たとえ事業に失敗しても返済の必要のないお金ですから、デットに比べてありがたいものです。投資家は、投資先にお金を貸すのではなく、投資先の事業に「お金を出す」というかたちで参加することになります。いわば事業主の一人になるわけです。事業主ですから、事業が成功して多大な利益が上がった場合は、相応の分け前を得ることができます。しかし、事業が失敗した場合には事業主としての責任をとって、出資金額の損失をも覚悟しなければなりません。

 

ですから、株式投資を勧めるのは、デットよりもエクイティのほうが、リターンが大きくなるからです(もちろん、そのぶんリスクも大きくなります)。また、日本の将来を考えたときに、デットよりもエクイティへの投資が望ましいと考えているからです。投資家にとってもデットよりもエクイティのほうが楽しいというか、わくわくするものです。

 

なぜならば、デットとは、しょせんお金の貸し借りにすぎないからです。もちろん、お金を借りたい相手がいて、そこにお金を貸すことは立派なビジネスですし、お金の流動性を高めて社会の役に立つ行為です。しかし、デットへの投資、つまりお金を貸すことは、お金さえあれば誰にでもできる簡単なことです。

 

対照的に、エクイティへの投資には、単にお金の貸し借り以上の意味があります。エクイティへの投資、つまり株式の購入は、その会社や事業の成長性を見込んで資本参加することです。例えば、有名ベンチャー・キャピタルのセコイアキャピタルが、創業したばかりのグーグルやヤフーにお金を出して、彼らのビジネスを助けたことこそがエクイティの本質です。

エクイティの仕組み

例えば、あなたの友人がスマホのアプリをつくる会社を興したとしましょう。創業資金は貯金から900万円を用意しましたが、資本金1000万円にするにはちょっと足りないんだとこぼしています。そこであなたは、自分の貯金から100万円を用立てることにしました。もちろん、いついつまでに返済してほしいなんてことは言いません。「いつでもいいから」というあなたに友人は大感謝し、「いつか必ず倍にして返すから」と約束します。


あなたは知りませんが、友人はあなたを会社の株主にしていました。資本金1000万円のうちの100万円を提供したあなたは、この会社の所有権の10分の1を手に入れたことになります。例えばこの会社の1株の株価が10万円と設定された場合、発行される株数は100株ですから、あなたは10株(100万円)を所有することになるわけです。これがエクイティへの投資です。

 

とはいえ、起業したばかりのこの会社には売り上げも利益もほとんどありませんから、あなたへのリターンはまったくありません。もちろん、あなたもリターンを期待してお金を出したわけではないでしょう。100万円は彼にあげたつもりでいました。


やがて月日が経ち、いつのまにか友人の会社のアプリは大人気になっていました。課金アイテムがどんどん売れて、メディアにもとりあげられるようになりました。そんなある日、彼が200万円を持ってやってきます。利益がたくさん出て、会社の設備投資に使う内部留保を差し引いてもだいぶ余るから、株主に配当金を出すことにしたんだと言うのです。


株主への配当とは、会社に出資してくれた株主に対する、会社の利益からの分け前(リターン)です。会社が成長しているあいだは、利益のすべてを次の事業への投資に使ってしまうので配当が出ないことも多いのですが、友人が言うには、あまりにも儲けすぎたので配当として株主に還元することにしたのだそうです。こうしてあなたの出資した100万円は倍になって返ってきました。

 

また、配当金を受け取っても、株主としての権利がなくなるわけではありません。あなたはその後もなお、その会社の株を10株保有し、会社の所有権の10分の1を持ち続けています。ですから、この先も会社が利益を上げ続ける限り、配当金を受け取ることができるでしょうし、お金に困ったら持っている株を売却することもできます。

 

もちろんそのときには1株の価格は当初の10万円の何倍にもなっているでしょうから、そこでもまた何百万円もの売却益を手にすることができます。いささか夢物語のようですが、これがエクイティへの投資の本質です。


また、投資を受ける側の会社から見たとき、デットは返済期日を守って金利をきちんと支払えば後腐れのないただの借金ですが、エクイティの出資者に対しては、返済しなくてもよいだけに恩を感じます。そのぶん、研究開発に力を入れイノベーションを推進することなどを通して、市場競争を制して会社を成長させて報いねばならないというインセンティブが働くのです。


日本経済の成長という観点から考えたとき、成長の原動力となるのは、期日までに決められた金額を返せばよいデットよりも、イノベーションなどによって会社を成長させようとするエクイティへの投資だと私は考えています。
 

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

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