信用取引でできる「空売り」とは?
株式投資をしていると、空売りという言葉を耳にすることがあると思います。現物取引しかしていない人にとっては、難しく感じるかもしれません。しかし、証券取引所で株取引をして利益を上げたいなら、しっかりと理解しておいたほうがいい言葉です。
まず空売りとは、信用取引のうち、証券会社から株式を借りるポジションを指します。権利の売買なのでイメージが難しいですが、株価が下がると自分の資産が増える、と覚えておけばわかりやすいでしょう。この反対を信用買いといい、証券会社からお金を借りて株券を買います。この買いと売りの差をネットポジションといいます。
空売りは難しく感じるかもしれないので、トレードのイメージを紹介します。ある銘柄の株価が高すぎるので下がりそうと思ったり、悪いニュースで株価が下がりそうだ、と思うときに空売りポジションを持ちます。そして、思った通りに株価が下がれば、買い注文を出してポジションを清算します。この時の差額が利益になります。
基本的に信用取引なので、制度信用取引でポジションを持つと6ヵ月以内に清算しなければなりません。近年は、証券会社が直接株を貸してくれる一般信用もあり、こちらは無期限でも借りられます。しかし、制度信用より金利が高いので、あまり長期保有には向きません。これらを考えると、トレード期間は6ヵ月以内が一般的であり、実際に各銘柄の信用ポジションが清算される回転日数も、ほとんどが180日以内です。
空売りは「残高比率」が重要
空売りについて、信用取引であり、6ヵ月の期限付きポジションが多いことは、ご理解いただけたと思います。ここで覚えておきたいのは、期限付きの空売りポジションである以上、必ず買い戻しでポジションを解消しなければならないということです。つまり、多くの空売りポジションがたまっている場合、いずれ買い注文が増えることになるのです。
これは株式トレーダーなら必ず気にかけておくべきことで、プロのトレーダーはこのポジションを毎日のようにチェックして、株価の変動にどれくらいの影響を与えるかシミュレーションします。
次にこの買い圧力を評価する見方の一つとして、空売り残高比率を紹介します。空売り残高は日々のトレードで増えたり減ったりします。そして「空売り状態で残っているポジションが1日の出来高に対してどれくらいあるか?」を示すのが空売り残高比率です。
具体的な例を挙げると、空売り残高の株数が100万株の銘柄Aと銘柄Bがあるとします。一日の出来高が毎日1000万株を超える銘柄Aと20万株しかない銘柄Bで、空売りの買戻しが株価に与える影響は、異なることが予想できると思います。
仮に、一日に20万株の空売りの買戻しが発生すると、銘柄Aは1000万株の売買の中の20万株なので2%の影響しかありません。しかし、銘柄Bでは元々20万株の出来高しかないので2倍の買い注文が発生することになります。当然、銘柄Bの株価は銘柄Aの株価よりも、上昇率が高くなるでしょう。
このとき、空売りしていたトレーダーが買戻しを忘れると、一気に含み損が膨らむことになります。このようなリスクが空売りには付きまとうため、空売りポジションを検討する際は、空売り残高比率を必ず確認しましょう。
株不足からの踏み上げで大儲け!?
空売り残高が日々の出来高に対してどれくらいあるかによって、株価の変動にどれだけ影響を与えるか、理解できたでしょうか。ここでは、この空売りの特徴を利用して、資金力のある上級トレーダーが狙う、空売りの踏み上げについてみていきましょう。
ある銘柄に悪いニュースが続き、空売り残高がたまっているとします。この時、証券会社は株式を大量に貸し出す必要があるため、やがて株不足となり、品貸料として金利を上げることになります。もし空売り残高が大量に残った状態で、株価が下がらなくなったらどうなるでしょう? 安い株価で空売りポジションを取った人は、金利支払いが毎日発生して損失が発生します。つまり、ただ空売りポジションを持っているだけで、株価が上がらなくても損をする状態になります。
この時、誰かが大量の買い注文を入れて株価が上昇し始めたら、空売りポジションを持っているトレーダーは含み損が膨らみます。そうなる前に、空売りポジションを買い戻さなければなりません。こうなると、新しく資金を入れて買う注文より、空売りポジション清算の買いの方が大きくなります。この買いは、空売りポジションがある程度減るまで続きます。その間は、株価が急騰することになります。これが空売りの踏み上げです。
この時、現物ポジションや信用買いポジションを持っていたトレーダーは、その銘柄から資金が抜けていくのに、株価が上がるという状態になります。そして、十分株価が上がった後に売れば、差額で利益が取れるのです。空売りの踏み上げで儲けるテクニックは、プロの常套手段であり、腕の見せ所でもあるのです。